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事業承継のための株式対策(4)- 1(2018.7.24)

事業承継のための株式対策(4)- 1

前回に続き、「従業員持ち株会」の活用メリットがテーマです。

メリット *1 として、次のようなことがあげられます。

1.従業員の財産形成の一助となること
安定的に利益配当を行っている会社であれば、従業員持ち株会を活用するこ
とにより、従業員は、預貯金の収入利子より大きく、かつ安定的な収入を得
ることができます。加えて、従業員のモラールの向上、生産性の向上につな
がる効果も期待されます。

2.自社株式の分散防止に寄与すること
従業員持ち株会を活用する場合、持ち株会規約において、従業員の死亡・退
職の際には株式を会社が買い取る旨及びその買取価格を定めておくことがで
き、そうすれば、従業員の相続によって会社とは全く関係のないものが株式
を取得することが防止できます。

3.オーナーの相続対策・事業承継対策に役立てる余地があること
オーナーの持株を従業員持ち株会に譲渡することによりオーナーの相続財産
としての自社株式が減少します。また、増資の方法による場合においても、
自社株式の評価額が下がることにより相続財産が減少し、相続対策に寄与す
る効果も期待されます。(前号に計算事例を記載しています。)

次号も引き続き、事業承継のための株式対策についてご説明いたします。

*1 中小企業基盤整備機構発行「事業承継マニュアル」P92参照

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事業承継のための株式対策(3)- 2(2018.7.17)

事業承継のための株式対策(3)- 2

今回は、前号で提示した活用法のポイントをご説明いたします。

~前号までの内容~
【現状】
当社は、資本金1,000万円、社員50名の同族会社です。オーナー社長が発行済み
株式総数の80%を所有し、10%は配偶者所有、残りは同族株主以外の役員と社外
株主。

1. 資本金1,000万円(発行済み株式総数 20,000株)
2. 1株当たりの資本金の額 500円
3. 1株当たりの相続税評価額 10,000円
4. 配当率 年10%
5. 社長の相続税評価額 1億6千万円(20,000株×10,000円×0.8)

【活用方法】
社長の持株のうち、発行済み株式総数の30%(6,000株)を配当優先株かつ議決
権制限株式に転換してから社員持株会へ放出

1. 社員持株会への譲渡価額と譲渡益
売却価額:500円(売却額)×20,000株×30%= 3,000,000円
株式譲渡益:3,000,000円-(6,000株×500円)= 0
よって譲渡益は発生しない
2. 社長の相続税評価額 1億円(20,000株×10,000円×0.5)
→6,000万円の減額

POINT(1)
配当還元方式で株価を評価
(年10%配当している会社を標準、年配当率が5%未満の場合は2分の1で評価)

POINT(2)
持株会へ放出後の議決件割合71.4%
売却後のオーナーの議決権数 10,000株 ÷(発行済み株式の議決権数-従
業員持ち株会へ放出した議決権のない株式数6,000株)

「従業員持ち株会」活用のメリットとして、次のようなことがあげられます。
1. 従業員の財産形成の一助となること
2. 自社株式の分散防止に寄与すること
3. オーナーの相続対策・事業承継対策に役立てる余地があること

次号も引き続き、事業承継のための株式対策についてご説明いたします。

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事業承継のための株式対策(3)- 1(2018.7.10)

事業承継のための株式対策(3)- 1

「従業員持ち株会」の活用はどのようなメリットがあるでしょうか?今回はその
ことについて述べていきます。

オーナー会社(社長がその会社の株を全部持っている会社)における重要な取り
組みとして経営支配権の問題がありますが、同族会社での株式分散問題は経営基
盤が弱い非公開会社 *1 の中小企業にとってより大きな問題と言えます。

経営支配権の確保を前提に、「従業員持ち株会」を活用することは、安定株主の
創出、オーナーの相続対策等の面からも検討の余地があると言えます。
(活用上のメリットを考える事例として、以下の内容を前提にします)

【現状】
当社は、資本金1,000万円、社員50名の同族会社です。オーナー社長が発行済み
株式総数の80%を所有し、10%は配偶者所有、残りは同族株主以外の役員と社
外株主。

1. 資本金1,000万円(発行済み株式総数 20,000株)
2. 1株当たりの資本金の額 500円
3. 1株当たりの相続税評価額 10,000円
4. 配当率 年10%
5. 社長の相続税評価額 1億6千万円(20,000株×10,000円×0.8)

【活用方法】
社長の持株のうち、発行済み株式総数の30%(6,000株)を配当優先株かつ議決
権制限株式に転換してから社員持株会へ放出

1. 社員持株会への譲渡価額と譲渡益
売却価額:500円(売却額)×20,000株×30%= 3,000,000円
株式譲渡益:3,000,000円-(6,000株×500円)= 0
よって譲渡益は発生しない
2. 社長の相続税評価額 1億円(20,000株×10,000円×0.5)
→6,000万円の減額

次号では、活用法のポイントをご説明いたします。

*1 非公開会社:定款においてすべての株式について譲渡制限がつけられている
株式会社(特例有限会社は譲渡制限の定めがあるとみなされています)

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事業承継計画と株式対策 – 3(2018.5.29)

事業承継計画と株式対策 – 3

最近、「奇跡のスーパーマーケット」*1 という本が話題になっています。

「会社は誰のためにあるのか?答えはここにある!」全米が注目!従業員、取引
先、顧客が団結して地域社会を救った奇跡の実話です。マーケット・バスケット
という会社の「従業員・顧客の連合軍」と「株主」の戦いで、地域を巻き込み従
業員・顧客の連合軍が勝利したことが書いてあります。

テーマは“小規模企業の経営戦略”。ここで、事業承継のための株式対策に戻
るのですが、納税猶予と種類株式を駆使して税負担を全くすることなく後継者に
経営権をバトンタッチすることはできます。

しかし、それで事業の継続と雇用の維持は確保されるでしょうか?

前置きが長くなりましたが、その対策として「従業員持ち株会」をおすすめしま
す。

株式の売り買いということで考えれば、従業員持ち株会は、株式上場がされてい
ることが前提のように考えられますが、非上場会社でもメリットがあります。
特に「株価評価が高く、後継者問題を抱えている」という小規模企業には活用を
検討する価値があります。

株価評価が高い=オーナーの相続税対策として従業員持ち株会は大きなメリット
があると言われていますが、事業承継対策の視点から見直してみませんか?

導入には、メリットもデメリットもあります。「会社は誰のためにあるのか?」を
前提に従業員持ち株会の役割をどのように位置付けるのか、その基本になることを
次回以降で考えます。

*1 「奇跡のスーパーマーケット」2017年11月7日第1刷発行
集英社インターナショナル

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事業承継計画と株式対策 – 2(2018.5.22)

事業承継計画と株式対策 – 2

前号に続き事業承継計画と株式対策について考えていきます。

株式を譲渡制限としていた場合であっても、相続や合併は、一般承継であるため、
株式の移転を制限できませんでしたが、会社法が改正され相続や合併などにより、
譲渡制限株式を包括承継した者に、その株式を売り渡すことを請求する旨を定款
に定める(会社法174条)ことができるようになりました。

この制度を利用すれば、会社にとって好ましくない者が、株式を相続したとき
は、会社が売渡請求を行い、排除することができます。

ただし、売渡請求をするためには、以下の要件が必要となります。

1.自己株式の取得ですので、株主総会の特別決議が必要となります。
2.譲渡制限株式でなければなりません。
3.相続があったことを知った日から、1年以内に請求権を行使しなければなら
なりません。
4.自社株の買い取りなので財源規制を満たさなければなりません。分配可能利
益の範囲内の金額でしか買い取り請求ができません。

自社株の評価額を確認するとともに、現状の持ち株関係を図解整理し、経営上の
将来リスクについても対策を考えましょう。

詳細については、顧問税理士等にお尋ねください。

先日、「株価評価が高いので、後継者へ株式を贈与するため納税猶予制度を活
用したいと考えているが、今後の会社経営を考えた場合幹部や社員のこともあり、
もっと別な方策はないものか?」という相談がありました。

会社法では、株主に、「特別の権利を与える株式」や「権利を制限する株式」な
ど、通常と異なる種類の株式の発行を認め、法定しています(会社法108条 異な
る種類の株式⇒種類株式と言われています)。

種類株式は、資金調達や敵対買収からの防衛、円滑な事業承継等を目的として株
主平等の原則の例外として認められたものであり、会社法で規定された種類株式
以外発行することができず、発行したとしても無効になります(詳細については
会社法をご確認ください)。

納税猶予と種類株式を活用することにより、後継者に経営権を集中することが可
能になりますが「今後の会社経営を考えた場合幹部や社員のこともあり…」とい
う疑問の回答にはつながりません。

次号も引き続き事業承継計画と株式対策について考えていきます。
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事業承継計画と株式対策 – 1(2018.5.14)

事業承継計画と株式対策 – 1

今回から事業承継計画と株式対策について考えます。

親族内承継に限らず、納税猶予制度を活用することにより贈与税を負担するこ
となしに後継者へ株式を移転することができることになりました。

経営者が株式の3分の2以上を保有している場合は比較的問題がないと言えるの
ですが、株式が分散している場合があります。代表的なのが、過去に役員だった
親族外の者が株式を保有し、相続により会社と関係のない人が株主になっている
というケースです。

会社法を活用すると、次のような方策を用いて、後継者へ株式を集中させるとと
もに、分散を防止することができます。

1. 分散した株式の買い取り:経営者・後継者個人による買取りのほか、会社に
よる自社株式の取得(金庫株)も可能

2. 株式譲渡制限条項の設置:会社にとって好ましくない者への株式の譲渡(売
却)を制限することが可能

3. 相続人に対する売渡請求条項の設置:株式を相続したものが会社にとって好
ましくない場合、会社が株式の売渡請求を行うことが可能

上記2の株式譲渡制限条項(会社法2条第17号)については、ほとんどの会社が
設置しています。ここで問題になるのが、譲渡制限株式の株主に相続が発生した
場合における、その株式の発行会社の承認です。

相続による株主の変更(相続人への株式の移転)は、“譲渡”による株式の移転
ではありません。相続財産である株式は、相続により当然相続人に承継される
(民法896条)ことから、会社の承認は必要ありません。

相続財産である株式は、相続人が数人いる場合には、いったん相続人の共有にな
り(民法898条)、その後の遺産分割によって、個々の財産の帰属が決まり、株
式を相続した相続人が株主となります。非上場株式なのに、株主名簿に会ったこ
ともない株主の名前が載ることになってしまいます。

次号も引き続き事業承継計画と株式対策について考えていきます。
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SWOT分析(2)-3(2018.3.27)

SWOT分析(2)- 3

前回までにご説明したSWOT分析をする前までの4つの流れにそって進むことに
より、SWOT分析の「目標」が明確になります。

そして、次のステップがSWOT分析とクロスSWOT分析です。
次回、具体的な事例でご説明します。

後継者が、ボトムアップですすめる流れに参加することにより、幹部や社員と
の合意形成が図られビジョン実現に向け、認識を新たにすることもできます。

「目標」が明確になっている会社であれば、SWOT分析→クロスSWOT分析と進み
戦略策定に進むことにより、「ずっと勝つためにどうすればいいか」という戦
略が生まれるのではないでしょうか。
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SWOT分析(2)-2(2018.3.20)

SWOT分析(2)- 2

前回ご説明したSWOT分析をする前までの1~3の流れはトップダウン *1 で行い
ます。

わが社のあるべき姿を示すのは経営者の役割です。

後継者と一緒に考えることができれば、ベストな事業承継計画に進むことがで
きるのではないでしょうか。

以下の流れはボトムアップ *2 で進めます。

4、環境分析
SWOT分析で内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)の情報を
考えるためには、参加する幹部や社員がわが社の経営環境について同一
の認識が必要です。環境分析には様々な手法がありますが、私は
「3C分析 *3 」と「5F分析 *4 」をすすめています。

*1 トップダウンとは、企業経営などで、組織の上層部が意思決定をし、その
実行を下部組織に支持する管理方式。(コトバンク参照)

*2 ボトムアップとは下からの意見を吸い上げて全体をまとめていく管理方式。
(コトバンク参照)

*3 3C分析・3CとはCustomer(市場・顧客)・Competitor(競合)・Company
(自社)の3つ言葉の頭文字。(人材マネジメント用語集)

*4 5F分析とは、マイケル・E・ポーターが示した業界構造の把握のための方
策。業界内の競争に影響を与える要因を5つに分類し、それぞれの力の強さ
や関係性を分析することでで、業界構造の特徴を明らかにすることができ
る。(マーケティング用語集)

次号は、SWOT分析をする前までのプロセスのまとめとなります。

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SWOT分析(2)- 1(2018.3.13)

SWOT分析(2)- 1

中小企業の経営戦略立案にはSWOT分析のアプローチが有効で人気があります。

前回、目標が明確であれば、SWOT分析は戦略を考えるツールとして有効と書き
ました。これまで取り組んできたことをもとに、経営戦略策定に役立つSWOT分
析をする場合の目標と、そこに至るまでのステップはどうあるべきかについて、
以下にまとめました。

私は、SWOT分析をする前までのプロセスと分析結果をもとに戦略を導きだす流
れは、次のように進める必要があると考えています。

1、経営の基本要素見直しと目標設定
経営の持続性を高めるためには、事業承継をする時点(仮に5年後)での
事業領域 *1 を再定義し、5年後の目標(ビジョン)*2 を設定。

2、商品・市場(どこに何を売るのか)
現在扱っている主な商品と市場の実態を把握し、アンゾフの成長マトリ
クスで今後の成長戦略を考える。

3、財務計画
上記をもとに、現状の財務数値を確認し、損益分岐点とキャッシュフロー
の推移を把握する。

*1 事業領域(対象顧客・商品・提供方法・技術などの組み合わせ)

*2 ビジョンとは、将来のある時点でどのような発展を遂げていたいか等の構
想や未来像(コトバンク参照)

次号は、引き続きSWOT分析をする前までのプロセスについてご説明いた
します。
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SWOT分析 – 3(2017.12.26)

SWOT分析 – (3)

「目標」が明確であれば、SWOT分析は戦略を考えるツールとして有効です。

・強み(Strengths) :目標達成に貢献する組織(個人)の特質
・弱み(Weaknesses) :目標達成の障害となる組織(個人)の特質
・機会(Opportunities) :目標達成に貢献する外部の特質
・脅威(Threats) :目標達成の障害となる外部の特質

私は、経営計画を作成し目標達成のために社員や幹部でSWOT分析をしましょう!
という提案をしてきました。

失敗の経験も多いのですが、それには「目標設定と現状認識が甘かった」という
共通点があります。

SWOT分析の次のステップで「クロスSWOT分析」があります。

目標達成のための戦略は、内的要因(強みと弱み)・外的要因(機会と脅威)に
分類した上で考えます。

分析は戦略を考える始まりにすぎません。

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