今日の1ページ

『アンラーン戦略』過去の成功を手放すことでありえないほどの力を引き出す パリー・オライリー 著 中竹竜二 監訳 訳者 山田あゆ子

ダイヤモンド社発行2022年11月8日第1刷 P102

必要な条件③ 小さく始めること。あなたが考えるよりもっと小さく
「これから8週間で顧客維持率を15%上げる」という願望に戻ろう。どういうステップから始めるか決めるとき、たいていのクライアントが思いつくステップはあまりに大きすぎる。大きな一歩で解決策に飛びつき、それを一連のタスクに分解して実行しようとする。小さなステップに絞り込んで実験し、少しずつ成長しようとはしない。成功を、あらかじめ決めたタスクをすべて完了することと定義し、」少しずつ成長しようとはしない。前進しながらコースを修正することで新しい行動をつくり上げようとはしない。
 抜本的な解決策に向けてタスクを列挙しても、再学習することはできない。それこそが再学習すべき考え方だ。高いレベルの願望や結果に所言う点を合わせ、そこに向けて一歩一歩小さなステップを進めるのだ。そうすることで、自分の望む結果、そのための小さなステップが妥当であることが確認でき、行きたい場所に向けて正しい道を歩いていることが証明できる。
 たとえば、もっと健康的で活動的な生活を送りたいと願いながら、何から始めればいいという人が多い。人一倍野心的な人は、「半年着にフルマラソンに出る」という目標を立てる。ほとんどの人にとってこれは、不可能とは言わないまでも、あまりに楽観的な目標だ。この野望のおかげで、悪名高い「ソファからマラソンへ」のトレーニングプログラムができた。どんな人でも半年以内に、まったく走れない状態からフルマラソン完走者になれることを約束する、というプログラムだ。
 では、そのプログラムはどう始めればいいのか?ソファから立ち上がって、マラソンはおろかハーフマラソンさえも。1マイルも走ることなく始められると言ったら驚くだろうか(ホッとするかもしれない)。とても小さな一歩から始まるので、実行するのが簡単なのだ。初めは、ソファから立ち上がって家の周りを10分歩くだけ―過酷なところはまったくない。それからセッションのたびに、たとえば時間を10分から13分へ、歩くだけから軽いジョギングを交えるというふうに、ゆっくりと。小さく、少しずつ難易度を上げていく。こうすることによって、半年にあいだに、持続的にゆっくりとマラソンを走れるようになる。
 ソファから立ち上がってもいないときに、半年後にはフルマラソンを走ろうというのは大きく考えることであり、近所を歩こうというのは小さく始めることになる。大きな願望をかなえるために必要と燃えることよりも、ずっと小さい。だが。こんな簡単な行動に乗り出すことで、ゴールへと向かう道を歩き始めたことになり、そこから上り始めることができるのだ。

 『アンラーン戦略』は著者が考えたアンラーンサイクル(脱学習―再学習―ブレークスルー)を繰り返し、ステップアップを図ることにより目標を実現する「成長戦略」を学ぶ本です。
 目標を実現するためのアクションプランにこだわり、業績評価指標(KPI)を追いかけてきました。本に記載があるように「成功を、あらかじめ決めたタスクをすべて完了することと定義し、少しずつ成長しようとはしない。前進しながらコースを修正することで新しい行動をつくり上げようとはしない。」
 戦略の実行には適切なKPIが必要、KPIを実現するには決めたタスク(大きな目標)のみを追いかけるのではなく、小さく始めること、考えるよりもっと小さく始めることが大事と学びました。顧客維持率をUPするためには、その障害になっている課題を見つけ、その課題を解決するために取り組むべきこと、取り組むための障害を取り除くことから始める必要があります。

『変化を嫌う人を動かす』ロレン・ノードグレン+ティヴィット・ションタル 船木 賢一(監訳) 川崎 千歳(訳)

草思社発行 2023年2月23日第1刷 2023年4月25日第2刷発行 P155

デザインをシンプルにする
  製品に機能を追加できるからといって、そうするべきとは限らない。多くの機能を搭載した製品は、ユーザーが混乱するほどインターフェースが複雑になりがちで、その結果、「労力」面」(時間とエネルギー)と「感情」面(困惑間)を招くことになる。シンプルさの原則が実践されている最たる例は、グーグルの検索ページだ。Yahoo!の検索ページと比較してみればよくわかる。確かにグーグルの検索ページは見た目が特に魅力的という訳ではないが、始めて訪れた人が使い方に茫漠感を抱くことはまったくない。このシンプルさは、変化の絶えない検索エンジンの世界で変わることのないグーグルの競争優位の一つだ。サイモン・キングはこう指摘することを忘れていない。「シンプルであるということは、必ずしも少ないという意味ではない。本当の意味は、ユーザーが取り返しのつかないうっかりミスをすることがほとんど不可能になるように、新しい体験をデザインすることなのだ」

 久々の「今日の1ページ」です。本は読んでいたのですが「壁」に直面!自分でやりたいことが本当は「何」なのかわからないまま過ごしてきました(今もそうですが…)。昨年、毎月数多く出版される新刊書の中から、アイデアに溢れ内容が新鮮な本を厳選して紹介する月刊誌『TOPPOINT(トップポイント)』購読を始めました。この本は、その紹介で知りました。「新しいことを始めようとしているなら必ず読むべき本だ」フィリップ・コトラーが推薦しています。私が最近テーマにしていることは「シンプル」です。シンプルを説明している、サイモン・キングは動物カメラマン「発明と実験、あとは寝て待つそれが野生動物カメラマン」という言葉も見つけました。

『税理士が経営参謀になる極意』 公認会計士・税理士 柴山 政行 著

発行者 橋詰守 発行 株式会社ロギカ書房 2022年2月1日初版発行 P76

マーケティングの定義
 ここでは、マーケティングの定義について一緒に考えていきましょう。
 マーケティングについて考えるにあたって、ドラッカーの経営理論が非常に参考になりますので、まずはドラッカーの企業の目的に関する理論から見ていきます。
 ドラッカーによると、企業の目的は「顧客の創造」とされています。
 顧客の創造とは、お客様をつくること、マーケットをつくること、市場を作り出すことです。
 ドラッカーの言う顧客の創造という言葉を「お客様作り」とやさしく表現されたのがランチェスター経営で有名な竹田洋一先生です。
 お客様に喜んでもらい、お金を払ってでも欲しいいと思う人たちをたくさん作り出すことが企業の目的ならば、マーケティングは企業の目的を表年するための活動と考えていいでしょう。
 
そこで、顧客の創造あるいはお客様作りに関わるあらゆる活動を「マーケティング」と定義付けておきたいと思います。

ランチェスター理論に基づくマーケティング理論=竹田陽一
 お客様をつくる活動にはどのようなものがあるか、さらに具体的に見ていきます。
 竹田先生によると、お客様作りについて非常に重要なことが2つあると言います。
 1つ目は商品対策です。つまりいかに強い商品を作るかです。
 2つ目は、いかに強い営業体制を作るかという、営業対策です。更に営業対策を4つに分けます。商品対策で一つ、営業対策で4つ。併せて5つの項目を考えることになります。これが社長の考えるマーケティングの具体的な対策です。
 まず1つ目は、商品対策、強い商品作りです。
 2つ目が営業対策の1番目、営業地域対策です。どの地域にマーケットを絞り込むかということです。現代はインターネット時代で、この営業地域という概念は薄れてきているのですが、その場合はインターネットで「見込み客が検索するキーワード」に置き換えればいいでしょう。
 営業対策の2番目は客層・ルートです。どんなお客様に対して売るか、お客様の客層を絞り込む。例えば、会社がメーカーの場合、製品を最終的に消費するお客様との距離が遠いなら、その間に中間業者が存在します。どのようなルートで売るかというルート対策です。
 営業対策の3番目は新規の獲得です。
 営業対策の4番目が顧客維持です。一旦獲得したお客様を湧出させずに、いかに長くお付き合いしていただくか、顧客維持の活動・対策があります。
 以上の5つが、竹田先生のランチェスター戦略に基づくマーケティングの具体的な分解です。

3C分析
 さらに、重要な理論があります。それは3C分析と言います。3つの頭文字で始まる要素です。
 1つ目は、カスタマー又はクライアントです。これは顧客です。
 2つ目は、コンペティターで競合他社、ライバルです。
 3つ目は、カンパニーで自社、企業です。
 例えば、自社の強みを競合の弱みにぶつけることで、自社が共創優位に立てる可能性が高まります。そのために、顧客のニーズだけでなく、自社と競合の強みと弱みを詳しく分析する必要があるというのが3C分析のポイントです。
 ランチェスター戦略の5つの対策に続いて、3C分析の戦略フレームが重要なのだということを心にとめておいてください。

集客×販売×商品 マーケティングの4P
 私が2020年にマーケティングの専門家のセミナーを受けたときに非常に共感した理論があるので、これもご紹介します。
(中略)
 マーケティングの4Pと言われる理論です。Pの頭文字で始まる4つの要素があります。
 1つ目のPは、プロダクトです。プロダクトというのは製品です。
 2つ目のPは、プライスです。価格です。
 3つ目のPは、プレイスです。これは流通で流通戦略です。
 4つ目のPは、プロモーションです。販売促進です。
 プロダクト(製品)、プライス(価格)、プレイス(流通)、そしてプロモーション(販売促進)という4つの側面から企業戦略を見ていくということも大事だと言われています。
(攻略)

 新型コロナウイルス感染症の影響の長期化により、先行きが見通しにくい厳しい経営環境です。今、小規模企業者に必要なことは、外部環境の変化や消費者の新たなニーズを捉え事業の見直しに取り組むこと。この本のP84では「マーケティングは、お客様のニーズの変化に合わせる活動」と説明しています。「税理士が経営参謀になる極意」を書いた本ですが、経営者の皆様が読んでもわかり易い本でしたのでご紹介します。Amazonで買いました。蛇足ですが、誤字(校正ミス)を見つけて嬉しくなりました。

『トヨタの会議は30分』 山本 太平 著

富慶太郎発行 発行所株式会社すばる舎 20212年4月14日第1刷発行 2021年7月26日刷発行 P100

「口2耳8の割合で話す」
黙らず、かつ話過ぎず
 みなさんは「口2耳8」と聞いて何のことだと想像しますか?
 例これは会議などでのコミニュケーションスタンスを示した言葉です。
 現在のトヨタでもこれを実践しているかどうかはわかりませんが、私が在籍していた頃のある役員がこの言葉を好きだったらしく、たびたび「口2耳8」に関するメッセージが社内で回覧されていました。
 誰が言いだしたのかは知りませんが、いま思うとなんともトヨタらしい言葉だったなと感じます。

 例打ち合わせや会議での発言がゼロでは、その会議におけるアウトプットはゼロです。何も発言していないわけですから、例えるなら「口ゼロ」です。
 トヨタ在籍時には、そんなふうに会議で何も発言しなかったりすると「空気さん」と揶揄されることもしばしばありました。
 例一方で会議の場で「口8」、つまり自分がしゃべってばかりでは、今度は対話が一方的になってしまいます。特に関係者が一堂に会するような会議では、ほかの参加者の貴重な意見や情報を共有してもらえなくなってしまうでしょう。

 そのようなことにならないよう、自分の意見はしっかり表明して必ず議論に参加しつつ、相手の意見を聞きだしたり確認したりすること。
 こうした二つのバランスを、口=自分が話すこと2割、耳=相手の話を聞くこと8割という形で示したのが「口2耳8」という言葉の意味です。会議などではこの割合でコミュニケーションしなさいよ、ということですね。

 人間ひとりの脳内にインプットされている情報量はたかが知れています。多くの参加者が自発的に情報やアイデアを提供しあうことで、自分だけでは思いもつかなかったアイデアや結論を得られることがあります。
 「口2耳8」という言葉には、そうしたメリットを享受するために他者には常に経緯を示し、その意見を慶長したうえで自分の意思も明確に伝えるべし、というメッセージが込められていたのだろうと私は解釈しています。

 筆者は、新卒でトヨタ入社後退職しTBSに入社、その後アクセンチュアでコンサルタントの経験を積み、現在経営コンサルタント、事業プロデューサーとして活躍しています。会議等でのコミュニケーションスタンス「口2耳8」、意識しているのですがなかなか実行できません。「はじめに」の部分に「根回しや段取りの力はもはや誰にも求められていない」と書いてありました。先週紹介した「KPI大全」にもあったのですが、経営理念やビジョンの共有が前提になければ「口8耳2」になってしまう傾向が強いのではないでしょうか。

『KPI大全 重要経営指標100の読み方&使い方』著者グロービス 執筆者 嶋田 毅 発行者 駒橋憲一

発行所東洋経済新聞社 2020年9月10日発行 P30

「KPI経営の課題」
➃KPI至上主義に陥らない
 KPIを用いた経営は効果的ですが、KPIが過度に編重されるようになるのも問題です。例えば企業において最上の行動指針になるのは経営理念ですが、通常そこには数字が入らないことが多いでしょう。ビジョンや戦略には数字が入ることも多いですが、その場合も「○○業界ではナンバーワン」といった表現になることが多いものです。つまり、KPIは目的となるケースがゼロではないものの、やはり手段としての意味合いが大きいのです。
 何事にも言えることですが、手段の目的化や、手段が目的を振り回すことはあまり好ましいことではありません。例えば、新聞社が、社会目的を忘れて部数のみにこだわって大衆に迎合しすぎた紙面を作ったり、内容をおろそかにしてはやはり大問題です(その他にも営業面での「押し紙」の問題なども長く指摘されています)。テレビの民放も、視聴率は確かに大事なKPIですが、それに振り回されすぎると、人々の支持を失ってしまいます。より。身近な例でも、減量をしすぎて健康を損ねるようでは本末転倒です。常に、何のためにKPIを想定してマネジメントを行っているかという原点に立ち返ることが必要です。

 数字と言うものは、往々にして一人歩きしたり、金科玉条のように最終目的化することが少なくありません。みなにとってわかりやすいものであるがゆえに、あるいは他社と比較して優越感や劣等感を抱きやすいのです。そうした数字の持つマイナスの紅葉も踏まえたうえで、KPIというものと付き合っていくことが必要です。

 KPIを用いたマネジメントには限界があるという理解も必要です。例えば、確かに特定のKPIに評価報酬を紐づければ、人々をそのKPI達成に向けて動機付けることは可能です。しかし、それだけに頼った経営は非常にもろいものです。

 動機づけは確かに評価を活用して行うこともできますが、やはり本人の内発的動機が必要です。そうしたことを忘れて数字だけで人を動かそうとすると、非常にぎすぎすした組織になってしまうのです。また、戦術したように、評価に結び付く特定のKPIを高めるために、本来の企業の目標にそぐわないような行動をちってしまう可能性もあるのです。

 KPIは切れる刀だからこそ取扱いには注意が必要だ、ということは強く認識しておくべきでしょう。

 本のP30に、KPIを用いた経営は「適切に行えば」非常に効果的なのですが、時にはかえって費用対効果を損ねたり、意図せぬ結果を招くこともあります。ここでいくつかの運用上のポイントをご紹介しましょう。と説明があり、➀KPIのバランスをとる、➁KPIを適度にブレークダウンする、➂KPIは正確さと鮮度にこだわる、➃KPI至上主義に陥らないという区分で書いてあります。
 経営理念は最上の行動指針、KPIはそれを達成するための手段としての意味合いが大きいという「大切なこと」に気づき、➃を紹介しました。


i不都合な状況になるように仕向ける、計略におとしいれる、といった意味の表現。

『図解でわかる!戦略実行読本』~「実行の4つの規律」実践ワークブック 著者 クリスマチュズニー、ショーン・コヴィー、ジム・ヒューリンク 編者 フランクリン・コヴィー・ジャパン

発行所キングベア出版 2014年5月31日初版第1刷発行P34 

目標を絞れないのはなぜか?
なぜ多くの目標を抱え込んでしまうのでしょうか。
目標を絞れるタイプ度チェック

 あなたの考え方、状況を確認してみましょう。下記の質問を読んで、あなたに当てはまるものに✔をつけてください

□改善したいことがたくさんある
□ビジネスチャンスは一つも失いたくない
□上司や経営層があなたの目標を増やすことがある
□いつも多くの仕事や案件を抱えている
□今の目標を達成するためには、沢山の施策が必要だと思う
□良いアイデアはどんどん取り入れたい
□熱心に仕事をしていることを評価して欲しい
□たくさんの目標があれば、どれかは達成できるだろう

要注意のタイプ
 半分以上当てはまったら、あなたは野心的でクリエイティブな人物でしょう。実は、こういうタイプの方は、目標を絞り込むよりも、増やす方にどうしても傾きやすくなります。左ページのような悪魔が、そんなあなたの思い込みや不安につけこんで誘惑してくるので注意しましょう。この二人の悪魔(①良いアイデアを無視できない罠、②竜巻の中にある測定基準を全て改善したい罠)あなたが目標を絞ろうとするのを邪魔します。この誘惑にはまって多くのことを目標にしてしまうと、フォーカスがぼやけてすべてが平凡な結果に終わってしまいます。

リーダーの直観vs原則
 チームメンバーの行動が変わることが成功には不可欠ですが、竜巻に立ち向かっている彼らは一度に多くの行動を変えることはできません。ですから、一つか二つの最重要目標に焦点を絞り、チームの時間とエネルギーを一貫して注ぎ込む必要があります、一度に一つか二つの最重要目標にフォーカスすることが例えリーダーの直観に反することだとしても、絶対にそうしなければならないのです

 「7つの習慣」を中心とした、キングベアー出版の書籍です。KPI実践の本と一緒に書棚にありました。「組織が戦略をみるみる実行できる本」というタイトルに惹かれ読み直しました。P22に「実行を邪魔する本当の敵は、日常業務です。これを「竜巻」と呼ぶことにしています」と書いてあります。2022年下期に入り、7月がもう少しで終了。実行できていない戦略は「竜巻」のせいか?目標を絞れるタイプ度チェックでは、ほとんどに✔がついてしまいました。悪魔や竜巻のせいではなく、本に書いてあるように最重要目標を一つ(多くて二つ)に見極め後半戦の行動を改めます。

『社長学マップでわかる!図解 一倉定の実践社長学』 伊藤 彰彦(一倉定研究家)著

株式会社あさ出版発行 2022年4月15日第1刷 

●規律・清潔・整頓・安全・衛生 P107

 環境整備を業務として行う方法はどのようなものなのか。環境整備の定義と手順について触れておきたい。
 一倉は、「環境整備というのは、規律・清潔・整頓・安全・衛生の五つである」とし、特にその意味を明確にしておくべきものとして、規律、清潔、整頓について詳細に言及している。
 規律……「規律とは、①決められたことは必ず守る、②命令や指図は必ず行われるというのが正しい解釈」
 一倉は「規律」について、「社長学」ならではの、社長がもつべき心得を挙げている。たとえば、「『必ず行われる』については、命令や指図を受けた側に一方的な責任があるのではない」として、「命令した側には、行わせる、行えるように指導する。正しく行われたかどうかをチェックする責任がある」と述べている。そのため、「命令の出しっぱなし」や「いくら言っても部下がやらない」と嘆くのは、社長の心得違いであり、社長のほうに非があると断言している。
 清潔……「清潔とは、①いらないものを捨てる、②いる者を捨てないというのが正しい解釈」。
 「清潔」に関しては、「もったいないと捨てずにおくのは美徳のようであって美徳ではないのだ。いらないものに大切なスペースを占領されて仕事に差し支えるのは、愚行でしかない」とし、「もったいない、といっていらない物を捨てずにいるのこそ、本当の意味でもったいないことをしている」と主張している。「もったいないから捨てない」という点については、昔の人はいろいろな考え方もあるだろうが、少なくとも、仕事においては真理であると筆者には肯けるものがある。先述した私の会社における経験を今一度振返ってみたい。
 故障した工具類を「もったいないから、あとで修理してもう一度使おうと、工具箱の隅に置いていても「後で修理」する機会は訪れることなく、いつしか工具箱の隅でホコリをかぶってずっと放置されてしまい、貴重な作業スペースを占拠し、作業の邪魔になることがしばしばだった。
 環境整備の取組みにおける「清潔」を実現させるのは、「もったいないから捨てない」という考え方を捨てることからはじめなければならない。ドラッカーは奇しくも、イノベーションとは「体系的廃棄」でるとした。つまり「捨てること」がイノベーションを生み出すと主張したのだった。
 まさに、環境整備においては、「もったいないから捨てない」という考え方を心の中から捨てることによって、社長は白紙の眼で、環境整備がもたらす生産効率や品質改善、サービス向上などの具体的な効率を客観的に判断することができるようになるのではないだろうか。こうすることによって、一倉が言う「いる者を捨てない」眼力も同時に養われてくるのではないかと思える。
 整頓……「整頓とは、①物の置き場所を決める、②置き場の管理責任者を決めて表示することであって、“片づける”ことではない」。なぜなら、「片づけたら仕事にならないではないか。だから、「片づけろ」という指令は間違いである」から。これは考えてみれば至極もっともで、加えて「物の置き場所を決める時の留意点は仕事に最も便利なような、ということである」としている。
 この点について、“消火器”を事例に出して、「イザという時を考えて、取り出す時にジャマになるようなものは置かないようにしなければならない。これが案外できていないのを、私は知っている」と、だれもが思わずギクリとしてしまうような“真実”をさらりと指摘している。

 第2章 ステップ1「三種の神器」を揃える、三種の神器とは①お客様訪問、②経営計画書、③環境整備。P98に「一倉定は、「環境整備を仕事に原点と位置づけ、お客様訪問と経営計画書に並んで、社長が率先して取り組むべき大切な仕事であるとした」という記載があります。「業績のいい会社」は環境整備ができています。この本を読み、環境整備をすることにより「業績のいい会社」になれるという意味が分かりました。前書きに、ドラッカーのマネジメントは米国の大企業を背景にして生まれたが、一倉定の「社長学」は日本の中小企業における経営指導をとおしてつくられた、と書いてあります。経営者におすすめの本です。

『数値化の鬼』安藤 広大 著

ダイヤモンド社発行 2022年3月1日第1刷発行 2022年4月15日第3冊発行

変えられるもの」と「変えられないもの」を見分ける
「仕事のどこを変えればいいのか」P163

 これを考えるのが、いわば仕事の醍醐味です。
 思いつくままにテコ入れするのではなく、1つにフォーカスし、問題を時解決する。それは個人でも組織でも同じです。そのためには、目のまえでおこっていることの裏側にある「数字」を見つけなければなりません。結果を裏付ける数字があるはずです。

|どこに「X」が隠れているのか

 この見極めに必要なのが。「変数」と言う考えです。
 数学が得意だった人は。「y=ax+b」という一次方程式を思い浮かべてもらうと、「x」が変数であり、それより「y」の値が変わるということがイメージできるでしょう。
 「a」と「b」は定数であり、与えられた数字なので、ここでは変えられません。数字が苦手でも、この本質は理解しておかないといけないので、さらに例を挙げましょう。

たとえば、大事なプレゼンに臨むとします。
資料作成の時間を1時間から1時間に増やし、レイアウトにこだわりぬいたとします。しかし、プレゼンの結果があまり変わらなかったらどうでしょう。ここで2時間の努力を3時間や4時間に増やし、さらに資料作成に時間をかけるのは、間違った努力の仕方です。それは「プレゼン資料の「完成度」が「変数」ではない」からです。
今度は、プレゼンの様子を動画で撮影し、自分で見返してみるとします。すると資料をめくったときにすぐに要点を伝えることなく、ダラダラと前置きの話をしていることに気づきました。そこで、「次の資料に移ったら、最初の10秒で結論を述べる」という方法を試したとします。
すると、プレゼンを聞いている人の反応が変わり、プレゼンの成功する「回数」が以前より増えました。数値化された成果が出たのです。こうして「プレゼンでの「伝え方」が「変数」たったことに気づくことができます。

|「変数」こそが仕事の成果につながる

 このように結果を出すためには、
 「変数が何か」
 「どこに隠れているのか」
 ということを、試行錯誤して見つけ出さないといけません。 
 ここが仕事の成果に直結します。

 まずはプレーヤーとして、自分の仕事の変数を見つけられること、次にマネージャーや経営者として、マイナスにつながる変数を減らすこと。いくら努力しても変えられない部分、つあり「定数」は、さっさと諦めることです。「定数の重要性について、それぞれの方法を見ていきましょう。

 著者は、株式会社識学の代表取締役社長、創業からわずか3年11か月でマザーズ上場を果たしています。P80に識学流PDCAの考え方が説明してあり、PDCAのPは計画、これに時間をかけるのはムダと明言しています。計画は、実際に行動が伴ってはじめて意味を持つ。行動を「なんとなくを許さない」ところまで「数値化」すること、行動量を増やすPDCAの「D」を増やすことが重要。行動を判断する基準になるのがKPIです(「KPI(key performance indicator):目標を達成すための数値化された指標」という概念があります)。
 これまで、KPIをテーマに本を読み実践してきましたが「答」が出るところまで到達できません。この本を読み、KPIを決定する要素には「変数」がある。結果を出すために「やるべきこと」「やらなくてもいいこと」それが「変数」と理解でき、これまで超えることができなかった「壁」に挑む機会をもらいました。わかりやすいのでお薦めします。

『ミッションからはじめよう!』著者 フィールドマネージメント 代表取締役 並木 祐太

出版 株式会社ディスカバー・トウエンティワン 2012年3月25日第1刷 2012年4月15日第2刷

はじめに P4
 実際のところ巷にあふれている、いわゆる「問題解決本」に書いてあることは、問題解決のプロセスの一部にすぎません。
 そういう本を買ってはみたけれど、結局、使えない。プレゼンまでは上手にできたけれど、そこでおしまい。実際には、問題は未解決のまま……そういう経験をなさっている方も少なくないはずです。なぜなら、実際のビジネスの場面で大事なことは、分析することでも整理することでもなく、「実行」することだからです。

 問題を分析し、素晴らしい戦略を考えることは、手段と訓練と一定の水準以上の思考力さえあれば、誰にでもできます。けれども、その戦略を採用すると決断するのは、その結果に責任を持てる人だけです。
 そして、それを実行するには、強い意志と、周りの人を巻き込む力、徹底する力が必要です。新しい戦略には、必ず抵抗が起こるからです。
 なんであれ、人は新しいことを恐れます。面倒がります。それまでやってきた慣れた方法に戻りたがります。それが、自分たちの既得権を脅かすものであればなおさら、そもそも変革とはつねに古いやり方・仕組みを捨てることなのですから当然です。

 実行のプロセスでは、すべてが実行し続けるための仕組みとスキルが必要です。
 もちろん、本書の中で述べています。けれども、それだけでは、おそらくうまくいきません。
 何よりも大切なのが、本書のタイトルでもある「ミッション」です。
 実行の過程で思わぬ今案があったとしても、変わらぬモチベーションを持ち続けるさけの「ミッション」。なぜ、それを実行するのかというそもそもの志、使命です。

 では、そのミッションと、ただの願望、根拠のない夢、額縁の中に入った「理念」とはどこが違うのか?
 この本の中では、ミッションのつくり方についても、丁寧に、しつこいくらい繰り返し取り上げていくつもりです。ミッションづくりにも、先人の知恵の詰まった「フレームワーク」があるのです。
 それは、企業全体のミッションづくりから、プロジェクト単位、そして、個人のキャリアプランにも使えるフレームワークです。

 利益なくして組織の存在はありえません。利益の源泉は顧客です。したがって、顧客の存在なくして組織の存在はありえません。「事業の目的は顧客の創造である」とドラッカー教授が述べた理由でもあります。という言葉を深耕し「実行」をテーマに、以前読んだ本を読み直しています。

ドラッカーの本『5つの質問』によれば、経営理念、ミッション、ビジョンは以下のように定義されます(引用)。
・経営理念とは「わが社の社会に対する根本的な考え」を言い表したもの
・ミッション(使命)は「わが社が社会で実現したいこと」を言い表したもの
・ビジョンは「わが社のミッションが実現したときの状態」を言い表したもの
「経営理念は想い、ミッションとは行動、ビジョンとは結果のこと」

 以前紹介した『経営は実行』の本から、「実行のため最も重要なのはリーダーが自分の組織に情熱を持って深くかかわることであり、他社や自社の現実に正直であることだ」という文を紹介しました。ミッションからはじめ、事業領域を見直し(再定義)、そして組織への情熱と適切な現状認識を忘れず「実行」。
コロナで業績が低迷している…という言い訳から脱却するため元マッキンゼー最年少役員が書いた『ミッションからはじめよう!』、お薦めします。

『経営は実行』著者 ラリー・ポジティ、ラム・チャラン、チャールズ・パーク 訳者 高遠 裕子

発行所 日本経済新聞社 203年2月12日1版1刷 2007年6月4日刷 P103

第3章どのような貢献ができるか
実行を可能にする文化
 最近よく耳にする言葉がある。それは、考え方で行動は変わらない、行動が変われば考え方が変わるというものだ。
 行動によって考え方を変えるにはまず、「文化」という言葉を読み解くところからはじめなければならない。企業文化とは、突き詰めれば、会社が共有する価値観や考え方、行動規範が集まったものだ。文化の変革を目指す人たちは真っ先に、価値観を変えるべきだと主張する。だが、それは間違いだ。価値観とは高潔さや顧客の尊重、GEの場合ではバウンダリレスネス(境界のないこと)と言った基本原則や基準であり、強化する必要はあっても、変えなければならない場合はほとんどない。会社の中でも特に高い地位にある幹部が、その会社の基本的な価値観に違反したとき、リーダーは断固とした姿勢をとり、誰にでもわかる形で罰しなければならない。それができなければ、精神的な強さが欠けているとみられる。
 多くの場合、変えなければならないのは、具体的な行動に影響を与える考え方だ。考え方は研修や経験、社内外での評判、リーダーの言動に対する見方によって形づくられる。人間が考え方を変えるのは、それが間違いだったと納得できる証拠が提示されるときだけだ。たとえば自分たちの業界が成熟していて成長の見込みがないと考えれば、社員は時間や労力を割いて成長の機会を見つけようとはしない。自分ほど働いていない者がおなじ報酬をもらっていると考えれば、やる気をなくす。
 EDSiでディック・ブラウンが最優先したことのひとつは、考え方と行動に的を絞って文化を変えることだった。2000年1月の上級幹部会議では、過去5年間に自社についての見方を決めた最も重要な考え方と、今後、必要な考え方を上げるよう指示した。グループに分かれて議論した結果、次のようなリストができあがった。

EDSの古い考え方

・当社の事業はありふれている DESが身をおいているのは、成長率が低く、成熟した産業―コンピューター・サービスのアウトソーシングである。この業界は競争が激しく、差異化できず、したがって利益率が低くなるのも当然だ
・当社は市場平均並みの成長はできない EDSはありふれた業界の最大手であり、利益を出しながら成長するのはむずかしい。
・利益は売上についてくる 受注を増やせば、その事業の最大手であり、利益あげられる。こうした考え方では、資源の配分を誤ることになる。
・各リーダーが部門内の資源をすべて所有するー管理がカギとなる 各部門は完全な自主権を持ち、自分の縄張りを守る(こうした考えでは、事業部門間の協力が不可能になる)。
・同僚は競争相手だ 資源の所有者と同じく、この考え方が大きな障害になっている。社内で競争的な行動をとるのは建設的でない。競争相手は隣の部門ではなく、市場にいるのだ。市場で勝利するにはチームワーク、知識の共有、そして協力が欠かせない。
・社員は責任をとらない 「私の責任ではない」が決まり文句になっている。
・顧客よりもわれわれの方が知っている。
・顧客にどのようなソリューションが必要かは、当社の社員が教える
こうした考え方が、顧客の問題やニーズに十分に耳を傾けるのを防げる。

EDSの新しい考え方

・市場を上回る成長は可能あり、しかも収益性が高く、資本効率が高い形で達成できる。
・生産性を毎年向上させることができる
・顧客の成功を手助けする。
・卓越したサービスを実現する。
・われわれの成功にとって、協力がカギである。
・われわれは責任を負い、熱意をもって取組む。
・顧客の声にもっと耳を傾ける。

 二番目のリストが、上級幹部だけでなく、すべてのリーダーの行動を変える指針になった。行動とは考え方を実行したものだ。行動が結果を生む。真価を問われるのが行動だ。行動について問題になるのは、個々の行動よりも行動規範だ。行動規範とは、企業という場で受け入れられ、期待されている行動であり。「関わり合いのルール」とも呼ばれる。行動規範は、社員が集団としていかに動くかを示すものだ。だからこそ、企業が競争優位を築く上で重要になる

 この本は2008年頃、東京の書店で買いました。全米ベストセラーのビジネス書。誰も気づかなかった、「実行」のノウハウをはじめて解き明かした「生きた経営の教科書」ついに登場!と帯書きに惹かれました。「考え方で行動は変わらない、行動が変われば考え方が変わる」という言葉は今でも大事にしています。「実行のため最も重要なのはリーダーが自分の組織に情熱を持って深くかかわることであり、他社や自社の現実に正直であることだ。」(P11)原点回帰、実行の壁に再度挑戦します。


iエレクトロニックデータシステムズ、アメリカ合衆国に本社を置くITサービス企業。2008年にヒューレットパッカードに買収され、独立した企業としては消滅(Wikipedia)。