今日の1ページ

「居酒屋チェーン戦国時史」中村 芳平 著

イースト新書 2018年10月15日初版第1刷発行

(P26)
一軒の店からいかにしてチェーン化するか
 江戸時代までは、商家が店舗を増やすためには、養子、兄弟姉妹、親戚などの結束による家業としての支店経営をするのが基本であった。その次に、丁稚奉公制度を活用した「のれん分け」による支店経営が一般的となった。年少のうちから商家などに住み込み、下働きをして経営ノウハウを身に着けるのが丁稚奉公制度だ。これは丁稚から、手代、番頭と昇格し、五年、十年等決められた期限(年季)が明ければ、のれんを分けてもらい、独立できるというシステムだ。「のれん」とは、店の商号、格式技術、顧客、仕入先、事業ノウハウなど、有形無形の財産のことをいう。時代とともに、丁稚奉公の伝統は廃れたが、居酒屋業界には「社員独立制度」として、のれん分けの仕組みは今でも根強く残っている。
 一方の「FC」とは、チェーン・ストアが本部(フランチャイザー)となって加盟店(フランチャイジー)を募集し、店舗展開を行うことだ。国際チェーン・ストア協会の定義によれば、チェーン・ストアは、「単一資本で、11店舗以上の店舗を管理する小売業または飲食店の形態」のことをいう。
 具体的にはFCに加入した個人・法人が、FC本部から店舗の看板、商号、確率されたサービスなど、営業に必要な権利をすべて与えられるのに対して、加盟金、研修費など初期費用を支払うという契約を結ぶ。同時に売り上げに対してロイヤリティを支払ったり、広告負担金や店舗業務システム使用料などの継続費用を支払うという契約も結ぶ決まりだ。
 のれん分けとFCの違うところは、のれん分けが社員など社内の人間を対象にするのに対し、FCでは社外の人間、一般の人を対象にすることだ。もう一つ異なるのは、のれん分けは、五年、十年、二十年と長い時間がかかるのに対し、FCの場合はFC本部の研修を二~三週間受ければ、すぐにでもFCオーナーとして独立した店舗を持てることである。

 この本は、飲食業コンサル村岡さん(㈱レイ・コンサルティング)からフェイスブックで紹介いただきました。後書きP264に次のような記載がありました。「居酒屋業界でいま起こっていることは、「居酒屋チェーン業界の崩壊」ではなく、過去20年、30年続いてきた「陳腐化した居酒屋ブランド」と「新鮮で勢いのある居酒屋ブランド」との世代交代ではないかと思う」。まさに戦国史!飲食業のお客様が比較的多いので、大変参考になりました。「のれんわけ」「FC」そして第三の選択肢として「M&A」がありますが、その事例についても記載があります。おすすめの本です。

会社四季報「業界地図」東洋経済新聞社 2018年9月6日第一刷発行

東洋経済新聞社 2018年9月6日第一刷発行

(P154)
■コンサルティング
 ビジネスコンサルティングと言っても、グローバル企業の戦略を練る外資系大手から中小企業診断士までその内容はさまざまだ。共通しているのは需要の底堅さ。キーワードは「不足」だ。
 中堅、大企業では核となる30代後半から40代前半が就職氷河期世代に重なるため、層が薄い。そこに現在の人手不足が重なり、業務のデジタル化による効率化が不可避だ。調査会社のIDCジャパンによるとデジタル化のための業務手順見直し、デジタル化後のための運用面での需要が拡大している。
 もう一つが中小・零細企業の後継者不足だ。経営破たんによらない廃業は以前から大問題。政府は税制を改正し、2018年4月から事業承継をやりやすくした。中小企業のM&Aを得意とする業者はここを好機と攻勢を強める。
 好循環でも快晴とならないのは皮肉にも人手不足。コンサルは労働集約型なので、即戦力の経験者は取り合いになっている。

 快晴とは「市場が急拡大し、大半の企業が利益を伸ばしている絶好調の状態」。コンサルティング市場は、人手不足のため晴れ(市場は堅調に拡大傾向、上位企業を中心に安定的に成長している)。国内のビジネスコンサル市場予測では、デジタル関連は5年で約4倍と記載されていました。
IBM戦略コンサルティングのHPには、「デジタル+経営戦略」破壊されるか破壊者になるか、デジタル戦略で攻めの経営を!という文言がありました。これからのコンサルティングは、デジタルを使った情報収集と共有それによるビジネスモデル(儲けの仕組み)と連想されます。中小企業数の減少は小規模零細企業の減少、小規模規模零細企業に必要なのは、当該地域の会計事務所。これからの会計事務所に求められているのはコンサルティング機能の強化ではないでしょうか。

「AI失業」前夜、これから5年職場で起きること 鈴木 貴博 著

PHPビジネス新書 2018年7月2日 第1版第1刷発行


第7章10年後でも生き残れる「3つの人材」
―この先、どのような仕事を選ぶべきか
人工知能がこれからの10年間に「できない」仕事を目指す (P222)
 さて、これからの10年間で生き残れる仕事という観点では事業開発以外の2番目の切り口も有望だ。それは汎用型人工知能が登場しない限りは人工知能にはできないことに強くなるという発想である。つまり当面の間、人間にしかできない能力において誰よりも強みを持つ事を目指すという考え方だ。
 そして、これから先の10年で人口知能がどうしても人間には勝てないのがコミュニケーション能力である。
 他人から共感を得る。他人の心をゆさぶる。他人と心を通わせる。他人を動かす。こういった人間の心に働きかける仕事は、これから10年間、人口知能に奪われることはない。そして、どの職業や職種につくかという解決策ではなく、どのようなスキルを社会人としてのコンピタンス(強み)として磨くかという観点での解決策になる。
 コミュニケーション力をコンピタンスにするということは言い換えると、若いうちは職場の中で「理解の早い部下」「先回りして行動できる部下」という評判を勝ち取ることであり、キャリアが進むうちに「若手社員のインフルエンサー」「リーダーシップのある上司」「多くの人間を組織化して求めることができる貴重な部門長」というようにその立場を段階的に高めていくことになる。
 そしてこのようなコンピタンスを持つ人材こそが、今、最も多くの企業においてのどから手が出るほど欲しい人材、言い換えると不足している幹部人材なのである。
 そうなってきた最大の原因は、実は過去30年間起きてきた従業員の非正規労働化にある。

 この本は、ジュンク堂で見つけました。AI失業は金融と運輸から始まる…P43を読みそのことも良くわかりました。5年などたいした変化は起きないのでは…先行き不透明なので、外部環境の変化は、現在の状況から推測される範囲で考えようと思っていましたが大きな間違いでした。自動車がすべてを人工知能で完全に運転できるようになれば、世界の運輸市場と物流市場は革命がおきます。それが、2022年から始まります。会計事務所の業界もこれから大きく変わります。戦略ナビCloudはどうなるのでしょうか?この本を読み、組織のコミュニケーション力を高めるツールとして、活用事例を積み上げていきたいと思いました。

「最強の世界史」神野 正史 著

PHP文庫 2018年10月15日 第1版 第1刷

(P138)
戦略と戦術の混同
 戦略と戦術は全く似て非なるもので、これを明確にした上で努力しなければ努力が分散されてしまい、目的を達成することは叶いません。
 しかし、この「戦略と戦術」はあまりよく理解されていません。
 簡単に解説すればこうなります。
 【戦略】最終目的を達成するための大まかな計画方針
 【作戦】戦略を成功に導くための個別的・具体的計画
 【戦術】作戦を成功に導くための現場での手段・方術
 これを会社経営で喩えると
 【戦略】幹部会議で経営方針が決められ
 【作戦】その経営方針に基づいて、プロジェクトが立ち上げられ
 【戦術】プロジェクトを達成するために現場が臨機応変に対応する
といった感じになります。
 先の受験生の例に当てはめると、「模試ではいつも高得点(戦術の勝利)だったけど本番で落ちた(戦略の失敗)」とうイメージです。
 戦術でどれだけ勝利を重ねようとも、戦略で失敗したのでは何の意味もありません。逆にどれだけ失敗を重ねようとも、最終的に戦略を損なうことがなければ問題ありません。つまり、事において、常に「戦略」を見据えながら、「戦術」を行使していかなければ、「成功」は覚束ないのです。本章では、そうした戦略と戦術の成功例と失敗例を紐解いていくことにいたします。

 本では、分裂状態のドイツを統一国家に導いたビスマルクのことが書いてありますが、私は上記の1ぺージから戦略と戦術の間にある作戦は「重要成功要因」であり、会社経営に喩えた説明から、戦略にもとづく戦術を実行するための「仕組み」が必要であることを学びました。バランススコアカード(BSC)で戦略マップができ、戦術に相当する「KPI」、遅行指標(結果指標)と先行指標(行動を管理する進捗指標)が適切に設定されたとしても、プロジェクトが立ち上げられ、現場が行動しなければ、戦術は実行されない、結果として戦略目標は実現できないことになります。戦略マップを作ってPDCAをまわすこと(モニタリング)を実行すれば目標の達成度は上がるのですが、戦略と戦術の間には作戦=プロジェクトが必要です。

「最強の世界史」神野 正史 著

PHP文庫 2018年10月15日 第1版 第1刷

(P410)
“知る”と“理解”は“雲泥”万里
 知識を「知っている」ということと「理解している」ということは全く別物です。このことについては、洋の東西を問わず、古人も繰り返し戒めています。
 孔子曰く「学びて思わざれば即ちくらし」
 老子曰く多聞なればしばしば窮す」
 知識の蓄積(インプット)はあくまでも「スタート地点に立った」にすぎません。それを如何に実践(アウトプット)に移して、試行錯誤の中から、言葉で得た知識の「新の意味」を体感し、血肉と知るか、そこにかかっています。
 インプットしながら、それをアウトプットしないのは、自転車の前輪だけはめて、後輪をつけずにペダルを漕ぐ人と似ています。
 決して前に進むことはありません。
 にもかかわらず、知識の蓄積だけで満足してしまう人は大変多い。
 よく「年に100刷の本を読む」と自慢げに口にする人がいますが、そうした人はこの典型と言ってよいでしょう。
 どれほど膨大な知識を蓄積しようとも、こういった人が大成した例(ためし)はありません。
 せっかく得た知識がまったく活かされないためです。
 インプット(知識)したものはアウトプット(実践)して初めて生きてきます。最終章の本性では、知識を生かすことの重要性を学んで行くことにしましょう。
(以下は一部だけ記載します)
P416「君命も受けざるところあり」
 上司から命令を受けた部下が、いざ現場についてみると、その命令が元外れであることがあります。それは、上層部の無能・無意識によるそもそも誤った命令であったり、あるいは会議室で決議されたときには正しい判断であっても、現場は刻一刻と状況が変わるため、その命令が実行に移される段になったとき、まとはずれな命令になってしまっていることもあります。こうした場合、孫武は自著の中で「現場の判断で上司の命令に背くことも許される」と述べています。
P418「理解したものは必ず行動となって顕れる」
 「知行合一」という言葉があります。これは明代の儒学者・王陽明の言葉です。「理解したことは、必ず行動となって現れるものであり、行動に表れないということは、その者は知識はあっても何もわかっていないという証である」という意味です。

 2018年最後の今日の1ページは「最強の教訓世界史」です。
 まえがきに、古今を問わず、歴史にその名をとどめし偉人たちが口を揃えて言う言葉が「歴史を学べ」ではなく、「歴史に学べ」です。とあります。ナポレオン、劉備玄徳。ユスティニアヌス大帝、東郷平八郎、韓信…歴史登場する人物が、どのようにして困難を乗り越えてきたかわかりやすく書いてあり、興味深く読みました。最後の章が、インプットとアウトプットの話でした。戦略ナビを開発するため、バランス・スコアカードを学んできましたが、2019年はアウトプット優先で行きます。来年もよろしくお願いします。

「目標管理の教科書」五十嵐 英憲 著

ダイヤモンド社 2012年5月31日第1刷発行

(P101)
第3章 部下の意欲的かつ自律的な目標達成に向けてリーダーがすべきこと
□DOとは達成手段をやりきること
 リーダーとメンバーは、職場目標が個人のチャレンジ目標と、その達成手段を検討した。検討した過程では頭が痛くなるような場面もあったが、考える面白さも味わえるだろう。みんなでワイワイと揉み合って、最後は自分の意思を込めてチャレンジ目標と達成手段を決定したのだ。
 そういう目標だから、ある程度の納得感は持っている。「達成したい!」。あるいは「達成せねばならぬ!」という意欲や責任感の高まりも感じている。しかし、一抹の不安が残る。
 目標は立案したが、あくまでも机上のプランであり、うまくやり切れるかどうか、絶対的な自信はない。また、達成手段によっては、仕事を進めながら具体化したり、追加したりしなければならないものがあり、それができなければ期末には未達成が残っている。
 そんな不安とやる気が入り混じった状態で、チャレンジ目標のDOはスタートする。
 チャレンジ目標のDOとは、チャレンジ目標の達成手段をやりきることである。やりきるための原動力は、リーダーとメンバーの意欲的、かつ自律的な仕事ぶりにある。それが一般的に言われている「やる気」である。
 この章では、達成手段をやりきるためにリーダーがなすべきことや、やる気の換気方法を解説する。
□年度レベルの目標達成手段を細分化する
 達成手段をやりきるためには、年度レベルの目標とその達成手段を細分化、もしくは具体化し、「より短期の目標と達成手段」に置き換えて、その「Plan→Do→See」を推進する。それを「小さなPDS」「Plan→Do→See」と呼ぶ。
 短期とは丁度よい“仕事の仕切り”を意味しており、目標や手段の種類によってフレキシブルに設定するとよい。
 さまざまなケースが考えられるが、一番極端な場合は、「日々目標」の設定である。「感謝の気持ちを込めた“笑顔”と“ありがとうございます”の言葉で接客する」という類の目標は、毎日の振り返りが大切であり、一日ごとのPDSが経験的にはベストである。
 しかし、多くの目標は、仕事や個人生活のリズム感からして、1か月単位、あるいは1週間単位のサイクル展開が望ましい。

 日々目標の設定、その基本は「感謝の気持ちを込めた“笑顔”と“ありがとうございます”の言葉で接客する」その先にあるのが目標達成。逆に言えば、目標達成をするという強い信念につながっているのが“笑顔”と“ありがとうございます”という言葉の接客。この本、実は2013年に購入し、目標管理の教科書として熟読していますが、今読んでも新鮮です。来期の経営計画書をまとめている途中で読み直しました。

「目標管理の教科書」五十嵐 英憲 著

ダイヤモンド社 2012年5月31日第1刷発行

(P80)
■目標づくりで知っておきたいこと
 ここまで、「目標テーマのピックアップ→達成基準や達成手段を考える」というプロセスを職場目標と個々人目標とのキャッチボールという方法で、リーダーとメンバーみんなでワイワイガヤガヤ話しあいながら展開するという話をしてきた。
 その際の着眼点や留意点を色々と述べたが、もう一つ重要な点が残っている。定性目標の具体化に関することである。
■定性目標は具体化を!
 「夢と働きがいのある職場づくり」、「改善活動提案の徹底」、「コンサルティング営業の推進」、「人事評価システムの構築」等、つかみどころのない雲のような目標が設定されることがある。いずれも、目標もどきのスローガンであり、決して目標と呼べるものではない。
 どうして、そのような事態がおきるのか。それは定性目標の特性のためだ。
 売上高や利益率のように、数値表現できる定量目標とは違い、定性目標は数値化できないものである。そのために、どうしても抽象的な表現になりやすい。
 それを防ぐために、ほとんどの企業の目標管理マニュアルには、「目標はできる限り数値化する事」と記してある。しかし、それは極めて誤解を招きやすい表現だ。
 正しくは、定量目標は「必ず数値化すること」であり、定性目標は「進捗管理や評価に耐えうるように“具体化”すること」でなければならない。
 では、定性目標をどのように具体化するのか、以下の3つの方法が有効である。
■固有名詞を使ってイキイキと記述する
 定性目標の具体化の鉄則は、いきなりの数値目標は避けることである。まず、状態記述を試みる。何が、どのような状態になっていれば、目標達成なのかという、当事者の思いをできる限り具体的にイキイキと記述しようとするものだ。
 たとえば、明るい職場にしたいという当事者の思いを、「毎朝、みんなが笑顔で挨拶している」、「呼ばれたら、感じよく“ハイ”と返事をしている」、「お互いに認め合い、励ましあっている」というように、具体的な状態で表現する。
 こうすると、結果の判定も「◎○△×」の4段階くらいで可能になる。その際に、固有名詞を用いれば、記述場面が限定され、その分だけ進捗管理や評価の精度も高くなる。これが状態記述の基本である。
■数値化可能な代用項目を探し出す
 ➀の状態記述だけでは不安が残る。そのような場合には「代用数値化」も試みる。定性目標の本質に近い数値化可能な“代用項目”を探し出し、それを目標の達成基準として使用する、という方法である。この方法を用いれば、ほとんどの定性目標の数値化が可能になるが、注意すべき点が2つある。
 1つは、目標と因果や相関関係が認められる代用項目を用いること、それを無視すると、「特許の質を高める」という目標を「特許〇件以上」で代用するという類の過ちをおかしてしまう。典型的な質と量との混同、もしくはすりかえである。
 2つは、代用数値が目標の本質からずれないように、複数の、かつ、多面的な代用項目を用意すること。
 たとえば、「接客サービスの向上」という代用項目に、「売上の伸び率」を用意する。よく見られるケースであるが、果たしてそれで十分なのだろうか。
 確かに、接客サービスが向上すれば売上が伸長するという経験則が存在し、それに照らせば成立する図式である。しかし、売上の伸び率は、サービスの向上を証明する1つの要素に過ぎずそれをもって、全てを代替使用とするのは乱暴な話である。「再来店客数の増加数」など、いくつかに代用項目の追加が必要だ。そうしなければ、本来の目標の意味合いを薄めたり、ゆがめてしまう。
■代用項目と状態記述とを組合わす
 ところが、実際に多面的な代用項目を探してみると、そう簡単に代用数値が見つからない。では、どうするか。そのときには、前述の状態記述との組み合わせ使用を試みる。
 まず、実現したい状態を、「全販売員が両手を添えて、お客様に商品を渡している」という具合に書きだし、それに「売上の伸び率」や「再来店の増加数」とをセットにして、トータルで定性目標を具体化する。それが、経験的には一番有効な方法である。

 またまた「目標管理の教科書」です。いつも悩んでいる「定性目標」の設定がでてきたので、引用がついつい長くなってしまいました。BSC(バランススコアカード)では、遅行指標と先行指標という区分があります。私は、遅行指標=結果として達成すべき数値→定量目標、先行指標=結果を出すために行動すべき基準→定性目標と理解しています。
 目標設定のとき、数値で表すことが困難な定性的なことの定義と基準は重要です。その行動は結果につながるのか!この本では、定性目標は「進捗管理や評価に耐えうるように“具体化”すること」でなければならない。と定義づけています。

「目標管理の教科書」五十嵐 英憲 著

ダイヤモンド社 2012年5月31日第1刷発行

(P56 ステップ➃)
職場の今期の貢献領域一覧表を作成する
□職場ですべきことを全て洗い出す!
 ステップ➃では、部門の年度目標にたいしてこの職場が貢献すべきことは何なのか?職場ミッションと絡めて考える。次ページのような「職場の貢献領域一覧表」を用意してワイワイガヤガヤやりながら、記入していくといい。
〇戦略業務
 まず、「戦略業務の洗い出し」である。それは、部門の年度戦略目標との連動で、この職場が今期やるべき業務、あるいはやりたい業務の明確化だ。もちろん、中期経営計画をもとに考えた職場ミッションとの合致も必要である。
 例えば、「○○業界に狙いを定めた、新規顧客の獲得」という中期戦略に対応し、「アタック先キーパーソンとの信頼関係の構築」という部門の年度目標が設定されたとする。それを受けて、「顧客への問題解決サービスの提供」という職場ミッションを掲げるこの職場では、「新製品説明会等を企画して、A社キーパーソンの日常業務のわが社に関する関心を喚起する」という具体的な戦略業務に落とし込み、それを職場のやるべき仕事とするのである。
 このような仕事は、将来に関する種まきであり、今年の売上や利益の増減にはほとんど影響を及ぼさない。しかし、中期的な観点では、極めて重要な仕事である。今、地道にコツコツと種をまくから、3年後に刈り取れる。種まきを怠れば、餓死に近い状態が待っている。そういう性格をもった業務であり、決して疎かにできない重要な仕事である。
〇日銭業務
 戦略業務に対して、「部門の日銭業務」はもっと生々しく、現実的である。
 株主や銀行と約束した売上屋利益目標の達成が部門経営には重くのしかかり、その必達要請が現場には飛んでくる。
 製造部門には「コストダウン目標」が、営業部門には「売上目標」が、いやおうなしに天から降ってくる。また、間接部門には、法律改正に伴う「環境変化に対する応急措置」が緊急業務として課されることもまれではない。
 いずれも、職場ミッションに照らせば、この職場の仕事であり、拒否が許されない「必達業務」である。手抜きをすれば、たちまち会社がピンチに立たされる。商法で定められた決算にも支障をきたす。部門の日銭目標と連動した職場の日銭業務も、戦略業務と並ぶ、重要な「日常業務の役割責任業務」なのである。

 前回に続き「目標管理の教科書」です。この本は、MBO-S(目標管理のセルフコントロール)をテーマにしています。戦略マップをBSCで作成し、戦略の実行にフォーカスしてきたので、「戦略業務」と「日銭業務」という区分が新鮮でした。戦略マップで実行する戦略目標とKPIには「戦略業務」と「日銭業務」が混在しています。KPI設定が難しいと感じる理由はここにもあることに気づきました。

「目標管理の教科書」五十嵐 英憲 著

ダイヤモンド社 2012年5月31日第1刷発行

(P46 ステップ②)
職場と個人のミッションをみんなで確認しょう
□職場のミッションを話し合う
 部門の中期経営計画(ビジョンと戦略)をメンバー全員が確認したら、次にリーダーが仕掛けるのは、「職場のミッションの明確化」の議論である。職場のミッションとは、中長期的に見た職場の役割と担う責任のことだ。
 向こう3~5年間を見渡して、この職場が貢献すべき対象は、いったい「何」なのか、あるいは「どこ」なのか、貢献対象を固有名詞に近い状態で把握して、その貢献対象に中長期にわたって「提供すべき職場の仕事」を、部門の中期経営計画と絡めて生き生きと導き出すこと。
 これが職場ミッションの明確化のストーリーであり、それに則って、リーダーとメンバーが真剣な議論を展開すれば、お互いの想いのこもった職場の根本的な役割の共有化が可能になる。また、役割の実践意欲も刺激されるだろう。
□絶対に外せない顧客への貢献
 職場ミッションについて話し合う際に、絶対外せない貢献対象が2つある。
「お客様」と「適正利益の確保」である。基本的に、どんな職場も、何らかの形で両者に貢献することが求められているからである。
 とりわけ、お客様への貢献は重要だ。お客様が商品を買ってくれなければ、何も始まらない。究極的に会社を支えているのはお客様なのである。
 それを忘れずに、全職場が顧客への貢献を意識する事。それが職場ミッションである。

 この本を読むのは何度目だったか忘れました。表紙には「ノルマ主義に陥らないMBOの正しいやり方」というサブタイトルがあります。今回は「職場ミッション」という言葉が気になり読み直しました。私は、経営の基本要素として、ミッション、ビジョン、ドメインを考え中期経営計画を作成することを進めてきました。先日、幹部合宿で中期経営計画(ビジョンと戦略)を話し合ったのですが、戦略を実行する過程で目標管理は必須であり、その目標管理を「ノルマ管理」にしないために「職場のミッション」さらには「リーダーのミッション」「個人のミッション」が必要ということが良くわかりました。web軍師のスコアカードの赤と黄色を緑にするための「鍵」がここにもありました。この本は何度も読み直します。

「OUTPUT」学びを結果に変えるアウトプット大全 樺沢 紫苑 著

サンクチュアリ出版 2018年8月3日初版発行

(P066~69 12断る)
 「本当にやりたいこと」を優先するために
 「断らない人」は、自分が本当にやりたいことに対して、エネルギーと時間を振り向けることができなくなっています。休息や睡眠、家族と過ごす時間も削られる。つまり、断らない人は、確実に不幸な人生を歩むのです。死ぬほど忙しくて睡眠がとれなくなったり、健康を害したりして、初めて「断る」わけですが、それだったら最初から断るべきなのです。

「断らない」と起きること 「断る」メリット
・自分の大事な時間が無限に奪われる
・睡眠、休息時間が減り、憔悴していく
・頼めばなんでも受けてくれる「便利屋」だと思われる
・「やりたくない仕事」に依頼が増える
・ストレスがたまる
・必死に「残業」や「休日出勤」をしても結局、昇進にはつながらない
・自分の大切な時間が増える
・本来すべきことに、エネルギーと時間を集中できる
・意思に強い人だと思われる
・「断るのは申し訳ない」という罪悪感が無くなる
・スッキリする
・自己投資に時間が使えて、定時の仕事でしっかりと結果を出せる


断りの公式は、「謝罪(感謝+理由+断り+代替案)です。
例えば残業を頼まれた場合、「すみません(謝罪)。選んでいただいてありがとうございます(感謝)。本日、子供の塾の送迎があるため(理由)、残念ながらお引き受けできません(断る)。明日の午前中でしたら終わらせることができるのですがいかがでしょうか(代替案)。」

 久々の今日の1ページです。「断る」という言葉を無意識に避けていましたがこの本を読んでよくわかりました。本当にやりたいことをやるためには「断る」、「年間目標に合わない仕事を受ける」ということは、それに関係のない仕事に時間を奪われるということ。つまり、年間目標の実現にマイナスの影響しか及ばさない(P68)。
 ビジョン優先で考えていないから判断に迷い、決断が遅れる。そして断り切れずに引き受け、忙しい、忙しいの連続。ビジョンにもとづく戦略マップを描けず、日常業務優先になっていました。