今日の1ページ

『明日を支配するもの』P.F.ドラッカー 著 上田 惇生 訳

ダイヤモンド社発行 1999年3月18日第1刷 2019年3月27日第27刷

経営戦略の前提が変わる P48
 事業の定義を現実の成果に結びつけるものが経営戦略である。経営戦略が望ましい成果を上げないときには、事業の定義を考え直さなければならない。もちろん、経営戦略上予期しなかった成功も、事業の定義を見直すべきことを教える。まったくのとこる、何が機械であるかを決めるものは経営戦略である。経営戦略がなければ、何が成果に結びつき、何が資源の浪費にすぎないかを知る術はない。
 それでは、二十一世紀という急激な変化と不確実性の時代にあって、経営戦略自体が前提とすべきものは何か、組織特に企業が、自らの経営戦略の前提とすべきものは何か、何か確実なものはあるのか。
 これからの時代にあって、確実なものは五つある。いずれも、今日の経営戦略が前提としているものとは異なる。そもそも経済に係わるものではない。社会と政治に係わるものである。
 それは、次の5つである。
 (1)先進国における少子化
 (2)支出配分の変化
 (3)コーポレート・ガバナンスの変化
 (4)グローバル競争の変化
 (5)政治の倫理との乖離

あらゆる情報の基本 P57~58
 企業は、市場シェアには気を使う、売り上げを知ろうとし、その増減を気にする。あらゆる企業が自らの成長の度合いを把握している。ところが、ほとんどの企業が本当に重要な数字を知らない。すなわち顧客の支出のうち、自社が提供するカテゴリーの製品やサービスに使ってもらっている割合についての数字である。この数字の増減を追っている企業は、事実上皆無といってよい。
 支出配分の変化こそ、あらゆる情報の基本である。経営戦略のための基本的な情報である。なぜならば、支出配分は、一度落ち着くならば、長い間そのまま続くからである。一般的にいって、好不況の影響をあまり受けることがあまりない。
 したがって、支出配分の変化ほど、企業にとって重要なものはない。同じように重要なものが、同一カテゴリー内での変化である。
 二十一世紀の初めの数十年間は、この支出配分のカテゴリー間の変化と、カテゴリー内での変化の双方がかなり重要なものになる。ところが、この支出配分の変化に注目している企業やエコノミストはあまりいない。そもそも、彼らはそのような問題があることさえ知らない。

 今、集中して学んでいるのが「財務データと製品市場分析の組み合わせによる経営戦略分析」です。この本を読んで、マーケティングとともに顧客創造に必要なのがイノベーション。Afterコロナの経営戦略、「顧客の支出配分の変化」を知ることがイノベーションに取り組む基本と気づきました。

『創造する経営者』P.F.ドラッカー 著 上田 惇生 訳

ダイヤモンド社発行 2007年5月7日第1刷発行 2017年5月12日第12刷発行

診断の再点検
 これまでに大要を明らかにしてきた四つの分析から、企業のマネジメントは、その経済的な機能の遂行に必要とされる自らの事業に対する理解を得ることができる。しかし、それも四つの分析は、いずれも、一つだけでは役に立たない。
(1)業績をもたらす領域についての分析(第2章)、利益と資源についての分析(第3章)
(2)コストセンターとコスト構造についての分析(第5章)
(3)マーケティング分析(第6章)
(4)知識分析(第7章)
 これら四つの分析を総合して行うことによって初めて、企業のマネジメントは、自社について理解し、診断し、方向づけを行うことができるようになる。
 しかし、もう一つ重要な段階がある。それは、(1)と(2)の分析によって事業そのものについて行った暫定的な診断を、(3)と(4)の分析によって再点検していくことである。その結果、時として、せっかくの企業診断を大幅に変更する必要が出てくる。確かに事実は正確に把握した、しかし、まだ本当に理解するところまでは把握していないという場合出ある。
 例えばある製品は、その属すべき製品類型(第4章)を変えることが必要となる。非生産的特殊製品が、別の市場、別の流通チャネルでは、きわめて有望な製品であることがわかるかもしれない。逆に、暫定的な診断においては、堂々たる今日の主力製品、あるいは明日の主力製品と判断したものが、実はすでにライフサイクルの末期、あるいは末期近くにあるかもしれない。これらのことは、製品だけでなく、市場やチャネル、そして時には事業全体についても言える。

 研修で「Power BI」の説明を受けました。BIはビジネス・インテリジェンスの略。マイクロソフトからツールとして提供されています。企業が蓄積しているデータを分析し、その結果から得られた知見をあらゆる活動に生かすために使うことが目的。データそのものが蓄積されるデータベースとは違い、別のツールとしてレポートが表示でき、データ分析に関する様々な機能を持っているソフトウェアです。
 ドラッカーの本に「事業の再点検」という言葉があります。①現状を分析診断し、それを②マーケティング分析と知識分析で点検することが「事業の再点検」です。これまで、分析した仮説①をもとに②へ進むというステップを踏んできたのですが「再点検」の意識が低く、分析した①を経営者や現場の責任者と話し合う(現状確認)機会を持たず、②へ進んでいるのが現状でした。ドラッカーの教えとBIツール活用で戦略目標やKPIの設定がより進化することがわかりました。

エッセンシャル版「マネジメント」基本と原則 P.F.ドラッカー 著 上田 惇生 編訳

ダイヤモンド社発行 2001年12月13日第1刷発行 2006年7月13日第17刷発行 P39

戦略計画とは何か
 戦略計画とは何か、それは、➀リスクを伴う起業家的な意思決定を行い、➁その実行に必要な活動を体系的に組織し、➂それらの活動の成果を期待したものと比較測定するという連続したプロセスである。
 まず、あらゆる種類の活動、製品、工程、市場について、「もし今日これを打っていなかったとしても、改めて行おうとするか」を問わなければならない。さらに、「何を、いつ行うか」を問わなければならない。
 たしかに、すでに行っていることをより行えば良いという分野もある。しかし、すでに行っていることだけで、本来のニーズを満たし続けることはできない。
「何を行うか」を問うだけでは、問題の一面を上げたにすぎない。「いつ行うか」との問いも同じように重要である。なぜならば、この問いへの答えこそ、新しい仕事に取り組むべきタイミングを教えてくれるからである。

 「経営計画の実行」が気になり、思い出したのがドラッカーの本に出てくる「戦略計画」。この本を読み直し、リスクという言葉と戦略計画の意味を再確認できました。リスクとは「危険性」ではなく、「不確実性・不確定性」。不確実・不確定なもの(リスク)を実現するのが「戦略計画」。戦略計画とは、本に書いてある➀リスクを伴う意思決定、➁活動を体系的に組織する、➂期待と成果を比較するという➀~➂のプロセスをひたすら繰り返すこと、「どう行動すべきか」を意思決定するための設計図という解釈もできます。

『“流れ”の整理だけで会社が良くなる魔法の手順』~知的資産経営のすすめ~ 森下 勉 著

発行者 内山 正之 発行所 株式会社西日本出版社 2018年5月12日初版第1刷発行 2019年12月9日第2刷発行 P004


 「知的資産経営の開示ガイドライン」(経済産業省2005年10月)によると、知的資産経営の目的は、
➀企業が将来に向けて持続的に利益を生み、企業価値を向上させるための活動を経営者がステークホルダー(社員、取引先、債権者、地域社会等)にわかりやすいストーリーで伝え、
➁企業とステークホルダーとの間で認識を共有する
となっています。
また、基本原則として、
➀経営者の目から見た経営の全体像をストーリーとして示す。
➁企業の価値に影響を与える将来的な価値創造に重点を当てる。
➂将来の価値創造の前提として、今後の不確実性(リスク・チャンス)を中立的に評価し、対応を説明する。
➃株主だけでなく自らが重要と認識するステークホルダーにも理解しやすいものとする。
➄財務情報を補足し、かつ、矛盾はないものとする。
➅信頼性を高めるため、ストーリーのポイントとなる部分に関し、裏付けとなる重要な指標(KPI)などを示す。また、内部管理の状況についても説明することが望ましい。
➆時系列的な比較可能性を持つものとする。(例えばKPIは過去2年分についても示す)
➇事業活動の実態に合わせ、原則として連結ベースで説明する。
とあります。
 私は、ご縁をいただき、2006年の開示時期から係わり、今までに2,000社以上に知的資産経営のよさを伝え、構築・運営の支援をしてきました。
 知的資産経営はマネジメントシステムの一つです。どのように取り組めば事業価値向上に生かせるか、支援手法の手順の改善や進化に取り組んできました。

 経営の基本要素である「ミッション」。経営理念を実現するために果たすべき社会的役割と理解していましたが、表現の仕方がよくわからなかったのですが、この本で「知的資産経営」を理解し、「ミッション」を表現するプロセスがわかりました。 
ネットに「ミッションとは、組織が成長していく方向性を定めるために必要となるもの。組織で働くメンバーが団結するだけでなく、外部の利害関係者や社会から信頼を得る役割も果たす」と書いてありました。「知的資産経営」に取り組み、流れを整理することで「ミッション」の再確認ができます。新たなテーマができました。

『ドラッカー思考大全』藤屋 伸二 著

発行者 川全正法 株式会社KADOKWA発行 2016年12月15日刷発行 P102


14 戦略は「環境・目的・強み」の3つが重要
 会社全体の方向性を変えるときや、新しいビジネスを立ち上げる時の判断基準は、何でしょうか? あるいは、どのような基本的な条件がそろっていなければいけないのでしょか?
※戦略の前提となる3つの条件
 経営戦略は成り行きではなく、分析にもとづいて決定します。経営戦略を決定する前に、「経営環境」「事業目的」「自社の強み」の3つを確認する必要があります。ドラッカーは「この3つは合致する必要がある」と言っています。
➀経営環境:どのようなチャンスがあるか?
 経営環境とは、ニーズがあり、競争相手がいるところです。チャンスや脅威があるところです。ですから、経営環境の分析をしなければ、会社としてなんの判断もできません。
 会社は、社会に貢献するための仕組みですから、社会が何を求めているかを知ることから、経営戦略の策定をスタートさせなければなりません。
➁事業目的:どれを価値あるチャンスと見るか?
 社会には「さまざまな困った現象」があります。そのなかの「どの困った現象の解消に取り組むのか」を「決める必要があります。それが事業目的です。「人の健康を増進する」でも、「建物の健全な状態を維持・管理する」でも、「中小企業の業務改革にITの面から貢献する」でもよいのです。
 大切なのは、すべてができるように広げすぎず、一方で、ちょっとした変化にも対応できないほど狭めすぎない程度の事業目的を設定することです。たとえば、「総合〇〇企業」では広すぎます。反対に、ガソリンスタンドの事業目的が「給油所」ではエネルギーの変化に対応できないので狭すぎるでしょう。
➂自社の強み:どの分野なら勝つチャンスがあるか?
 「やりたいこと」と「必要とされていること」とは違います。さらに、「必要とされていること」と「自社が上手にできること」も違います。
 市場やお客様があなたの会社に求めているのは、「お客様が必要としていることで、かつ「他社より上手にできること、あなたの会社にしかできないこと」です。逆に考えれば、「どのような商品分野ならば、お客様に必要とされ、かつ競争にも勝てるか」という観点から、対象市場を絞り込んでいきます。

 今日の1ページ久々の更新です。著者の藤屋伸二(ふじやしんじ)氏をネットで検索してみたら「必要なことだけをわかりやすく、おもしろく、実践に役立つ」をモットーに【藤屋式ドラッカー活用法】を伝授するドラッカー活用のスペシャリスト。という紹介がありました。この本は、「ドラッカー」を学び、業績の向上に貢献を目指すビジネスマンに向けて書かれています(「はじめに」参照)。
 昨年後半から、ドラッカーの『創造する経営者』iを読み現状認識(第一に、「今日の事業の成果をあげる」ことに関し、アンバランスが生じていないかを確認すること。第二に、「明日のために新しい事業を開拓する」タイミングを認識すること。重要なのは「将来の見通し」の判断)にこだわった取組みをしてきました。
『創造する経営者』P144に「知識は、本の中にはない。本の中にあるのは情報である」さらに、「知識は、事業の外部すなわち顧客、市場、最終用途に貢献して初めて有効となる」という記載があります。『ドラッカー思考大全』の➀は外部環境分析、➁は事業ドメイン、➂はSWOT分析のことです。


i『創造する経営者』P.Fドラッカー 著 上田 惇生 訳 ダイヤモンド社発行 2007年5月17日第1刷発行 2017年5月12日第12刷発行

『渋沢栄一とドラッカー』國定 克則 著

株式会社KADOKAWA発行 2020.11.20初版 P24


⑷渋沢栄一とドラッカーはなぜ未来を創造できたのか
 渋沢栄一は西洋のカンパニーという仕組みを使って、当時の日本になかった新しい事業を次々に生み出し社会的イノベーションを起こした。一方ドラッカーは、「マネジメント」という言葉さえあまり使われていなかった時代に、人類史上初めてマネジメントという分野を体系化した。二人はなぜ新しい未来を創造できたのだろうか。
 私たちは渋沢栄一とドラッカーから何を学ぶことができるのだろうか。実は、渋沢栄一とドラッカーはよく似ている。考え方がよく似ているだけでなく、生き方までよく似ている。二人の共通点をとおして未来創造の本質について考えてみたい。
 未来創造という観点で二人を眺めると、まず浮かびあがってくるのは「高く広い視点で時代が要請するものを見極めていた」ということである。
 渋沢には常に天下国家という意識があった。また、運よく西洋の地を訪れ、当時の西洋の様子を自分の目で見ていた。そして日本は、西洋による植民地時代を避けるために富国強兵を旗印とし、産業の育成が急務だった。渋沢は、明治という時代が求めるありとあらゆる事業を設立していった。
 渋沢の事業の設立の順番も理にかなっている。まず、経済の血流といわれる銀行を設立した。それは、事業に融資するという日本で初めての銀行だった。ちなみに「銀行」という言葉を作ったのも渋沢である。次に製紙会社を設立している。明治になって税は紙幣で納めることになった。また、全国に義務教育の学校が設立され教科書が必要になった。明治初期という時代は大量の紙が必要になった時代だったのだ。
 ドラッカーも同じである。ドラッカーは常に社会全体という視点でものを考えていた。ドラッカーがなぜマネジメントの研究を始めたのか。そこには、社会の大きな変化が影響していた。
 19世紀まで人類の大半は、靴職人とか農民とかといったように個人で働いていた。それが20世紀には、人類の大半が組織で働くようになった。そういう社会である以上、組織のマネジメントがうまく機能しなければ人類は幸せになれない。そういう時代の要請が、彼をマネジメント研究に向かわせたのだ。
 ちなみに、ドラッカーの心の根底にあるのは「人間の幸せ」である。ドラッカーは「人間はどうすれば幸せになれるか」、特に「仕事を通して人間はどうすれば幸せになれるか」を考え続けた人だった。
 渋沢栄一とドラッカーが変化の時代に大きな成果をあげたのは、高く広い視点で時代が求めているものを見極め、時代が求めているものに彼らの時間を使ったからなのだ。
 渋沢栄一とドラッカーに共通する2点目は、「本質を見極めていた」ということである。これまで説明してきた「高く広い視点で時代が要請するものを見極めていた」というのもその1つだろうし、ドラッカーが渋沢を評価したのも、渋沢の基本的な考え方や鋭い洞察力だった。
 さらに、渋沢が500社もの会社を設立できたのも「本質を見極めていた」からに他ならない。彼は事業において極めて重要なのが「専門的経営者」であることを見極めていた。
 渋沢は彼の著書『青(せい)淵(えん)百話(ひゃくわ)』の中で、起業に関する重要な4つの注意事項を挙げているが、その1つが「事業が成立したとき、その経営者に適当な人物がいるかどうかを考えること」である。渋沢は彼が創業に携わったすべての企業の経営を行ったわけではない。渋沢は事業を起こす際に、事業が始まるはるかに前から経営者となる優秀な人材を探している。
 例えば、大阪紡績という事業を立ち上げる際には、津和野藩出身で当時ロンドン大学に留学していた山辺丈夫という人物に、渋沢自身が手紙を書き、経営者になるよう依頼している。だからこそ、500社もの会社を設立することができたのだ。
 一方ドラッカーは、社会生態学者として社会の本質を見極めることに天賦の才があり、社会の本質を見極めることを仕事としていた。ドラッカーはマネジメントの全体像とその本質を整理したことによって「マネジメントの父」と呼ばれるようになった。
 ドラッカーはマネジメントの全体像とその本質を整理しただけでなく、変化の本質、未来の本質、そしてその未来の本質から導き出される未来創造の本質についても整理してくれている(以下略)。

 この本は11月にも紹介しました。大河ドラマ「青天を衝け」を契機に、津本陽著『「渋沢栄一」、公益財団渋沢栄一記念財団著「渋沢栄一公式テキスト」、渋沢秀雄著「父 渋沢栄一」と読んでから、この本にもどりました。ドラッカーは人間の幸せそして“理念と利益”、渋沢栄一は天下国家そして“論語と算盤”、多くの共通点があります。会計人として中小企業のためになる仕事をしたい、しかし残り時間が…と言い訳を考えていましたが、健康を維持しもう少し頑張ることにしました。本のまえがき(P3)に「新型コロナの発生は大きな危機であると同時に、知恵次第では、これまでの業界構造が一変するといったことが起こるかもしれない大きなチャンスである」とあります。戦いはこれから、負け犬のまま人生を終わるな!と勇気づけられました。

『自分で考えて動く社員が育つOJT』 中尾 隆一郎 著

フォレスト出版株式会社発行 2020年11月6日初版 P130


「いかだ下り」でキャリアを積んで
「山登り」で専門性を高める

 リクルートワークス研究所の前所長の大久保幸夫さんのキャリア理論で、若手のころは「いかだ下り」敵にキャリアを積み、その後「山登り」敵に専門性を高めるというたとえ話があります。
 いかだ下りは、船に乗って川の急流を下っていくわけです。川の河口がゴールですが、そこに行くことが目的ではありません。
 急流をいかだで下りながら、船頭さんの指示に従い、いかだ上での自分の座る場所を変えたり、岩を棒で突いて方向転換を行います。つまり、チーム―クを学ぶわけです。若い時にこのチームで仕事をする術を学ばないと、その後チームで仕事をする、あるいはチームをけん引する際に、困ってしまうのです。そしてこの「いかだ下り」ができるようになると、次は「山登り」です。「山登り」は「いかだ下り」と異なり、その山に登ることが目的です。山は、それぞれの専門性を表しています。営業、販売、接客、マーケティング、法務、財務、経営、人事、AI、プログラム開発、セキュリティなどです。
 1つの山を選ぶと、その間は他の山に登れません。だから慎重に選ぶ必要があります。低い山であれば単独で登れます。しかし、高い山はチームでないと登れないのです。「速く行きたいのであれば一人で行け、遠くへ行きたいのであれば仲間と行け」ということわざがあります。
 まさにそうですね。
 時間がかかっても良いので、最終的には「人生をかけて実現したいゴール」が書けるようになれば良いと思います。

 著者は29年間リクルートに勤め、管理会計を導入し、いくつかの組織を担当。素晴らしい業績を残して中尾マネジメント研究所を設立しています。本には、「OJTの目的は自律自転する組織を創ること」「自律自転する組織が生まれた背景」とリクルート勤務時の体験が具体的に記載されています。他に『最高の結果を出すKPIマネジメント』『最高の結果を出すKPI実践ノート』があります。
 これまで、「速くいきたいのであれば一人で行け」を優先してきた反省から、人材育成を重要成功要因に掲げ適切なKPIを設定するため、ヒントを探し、書店でこの本と出合い多くの気づきがありました。すでに設定したKPIについて話し合い、従業員みんなで共有することを進めます。

『人生に生かす易経』竹村 亞希子 著

発行所到知出版社 平成19年11月8日初版 平成31年3月15日第6刷発行


本業に徹し、プロの技を身につける P134
 マネジメントとい言葉があります。マネジメント能力はこの「君子終日乾乾し、夕べに愓若(てきじょ)たり」の段階で身につきます。
 マネジメントという言葉は、直訳すると「目的に向かって必死になって苦労して、なんとか工夫して実現させる」という意味になります。
 この「君子終日乾乾」の時代にマネジメント能力を養っておかないと、後で苦労します。つまり、この時代に化けて出てくるものがマネジメント能力なのです。アマチュアからプロになる変わり目、素人から専門家になる変わり目が、乾愓(けんてき)の時代です。
 この時代は、日々の量稽古を積み重ねることでやがて量質転換が起こり、そこにはじめて独創性が生まれるのですが、それはあくまでも「業に居る」中で出てくるものです。「徳を進め業を修む。忠信は徳を進めるゆえんなり。辞(ことば)を修めその誠を立つるは、業に居るゆえんなり」とありますが、この「業に居る」とは「本業」という意味です。自分の本籍、本業において、その能力を養う、その能力を創出することです。
 だから、必死になって苦労して工夫を凝らすマネジメント能力も、すべて仕事を通して身についてくるのです。
 また、「忠信」という字に注目してください。これは、「高揚感をもって仕事に取り組む」という意味になりますが、これがマンネリ化を防止するのです。マンネリ化は起きやすいものであるからこそ、潜龍の時代に打ち立てた確乎不抜の志を研磨していくのだという高揚感をもって自分で乾を育てなければならないといっているのです。

 龍の役割は恵みの雨を降らせて社会に貢献することでした。その貢献の意味が「業に居る」という言葉の中に含まれています。それは本業を通して社会に役立つものを提供するということです。感心できない商品を提供して、たまたまそれによって業績が伸びたから、利益の一部を社会に還元して貢献しようというものではないのです。「業に居る」という本来の意味は、自分の本業を通して社会に役立つものを提供する。それによって、従業員も、従業員の家族も、得意先も、消費者も、地域経済も活性化して、めぐりめぐって社会に貢献するということです。その出発点が本業にある。それを忘れてはいけない、という意味も込められています。
 もちろん、余裕ができたときには本業だけでなく、さまざまな形で社会に還元するのはすばらしいことだとも易経はいっています。

 この本は、尊敬する浜松の先生から教えてもらいました。私は、易や占いを勉強したことが全くありません。著者のまえがきに「易経は東洋の古典の中で最も古い書物です。東洋思想の原点ともいわれ、古くから帝王学として学ばれてきました。東西数多く古典の中で、易経の際立った特徴は、時と兆しの専門書、時の変化の言葉を解く書物、そして知恵の宝庫であるということでしょう」とう説明がありました。
 「易経は難解だ」という先入観があったのですが読みだすと面白くてためになりました!P123に「君子乾乾の時代」は、基本から本物の技を創出する段階です。基本はもうすでに修めました。次は想像力、創意工夫、オリジナリティ、本物の個性などを開花させるときです。」と言う解説があります。
 今日の1ページで紹介した部分を解説するだけの理解力がありませんが、コロナ禍から抜け出す行動の基本は、「君子乾乾の時代」と似ていることに気づき掲載しました。この本を読んで、脱出の「兆し」をつかみませんか!

*「君子終日乾乾し、夕べに愓若たり」の解釈P125
 乾乾だからと強く強く、ただ積極的にいけばいいと考えていると蛮勇になってしまいます。ところが、おそれを知り、健全な警戒心を持ち、勇気を奮い起こしていくようにすれば、大胆かつ細心な行動になります。そういうふう風にいきなさいよ、と教えているのです。

『5G ACCOUNTING 最速で利益10倍を目指す経営バイブル』税理士 鈴木 克欣 岡本 辰徳 著

株式会社幻冬舎メディアコンサルティング 2020年6月22日第1刷発行 


クラウド型AI会計システムはここが違う P51
 第5世代の会計ツール、それを私たちは「クラウド型AI会計システム」と名付けました。クラウド型AI会計システムの登場により、中小企業の会計の仕組みは大きく変わろうとしています。
 クラウド型AI会計システムは、過去会計のために作成されたあらゆる会計ソフトのデータを標準化・一元化して未来予測会計へ導くための道具であり、次のような特徴があります。
①財務分析
 第1の特徴は、企業の財務分析における精度(質)と集計スピード、そして分析頻度です。
 人間における健康診断と同じで企業の財務分析は、経営上の問題点を早期に発見し、早期に対策を講じるために不可欠です。そのためには毎月、基本的な改易データの取りまとめを行うことが欠かせません。
 一般に企業の会計データをまとめる方法には、「記帳代行」と「自計」があります。「記帳代行」とは、帳票類などを会計事務所に渡して、仕訳から試算表作成までのすべてを行ってもらうものです。それに対し、「自計」とは、仕訳などは社内の経理担当者が行い、そのチェックと試算表の作成を会計事務所にまかせるものです。
 中小企業の会計業務として理想なのは「自計」ですが、社内の経理担当者のレベルによって精度に大きな差が生まれます。
 一方、「記帳代行」についても実際には会計事務所によってチェック内容や試算表の質に差があるうえに、試算表が出てくるまでに時間がかかるケースが少なくありません。
 この点において、クラウド型AI会計システムなら、AIを使って入力時のミスのチェックや助言を自動的に行い、入力データもクラウドで行うため、いつでも、どこでも、誰でも作業することができます。
 また、集計の途中で金額の中身を確認したい時には、見たい箇所をクリックするだけで簡単に確認できるクイックドリル機能などもあります。クイックドリル機能を使うと、わざわざ会計ソフトを起動する必要がありません。
 そもそも、クラウド型AI会計システムには、
 ・自己資本比率
 ・売上高総利益率(粗利率)
 ・流動比率
 ・労働分配率
 ・総資本利益率
 ・債務償還年数
など、50種類近い財務分析指標が備えられており、精緻な分析が可能です。さらに一般的な財務分析は年1回、決算書をベースに行うだけですが、クラウド型AI会計システムでは、これを毎月行える仕組みがあります。
 財務分析はなぜ1回しか行われないのか、なぜ1回しか行えないのかというと、そこには単純な理由があります。
(以下略)

 この本は、今年6月ぐらいだったと思いますが、クラウド型AI会計システム“BIXID”を開発している(進化しているので“している”と書きました)株式会社YKプランニングから贈っていただきました。昨年11月ぐらいに会計事務所博覧会を見学し、これから会計事務所はAI・RPAの時代、大きく変わるという気づきがあり、現状とあるべき姿のギャップにもんもんとしている時期でした。本の内容は、「やりたいこと」の先にある内容で気持ちが沈みかけた記憶があります。
最近、CXやDXという言葉をよく聞きます。2020年はコロナ禍で会計事務所として“これから”どのように進めばいいのか大いに悩んだ1年でした。しかし、年末になって「BSCとクラウド」にこだわり続けてきた成果で「やるべきこと」が見えてきました。改めてこの本を読み、今年1年の活動が無駄でなかったことが確信できました。
 勘違いと笑われないように…2021年は取り組んでいる事例で「答え」を出します。「やりたいこと」ではなく「やるべきこと」に集中し、なぜこの本を読み直したのか…「答え」がでてから今日の1ページに書くことにします。コロナ禍ですが、ワクワクして年末年始を迎えます。来年もよろしくお願いします。

『マーケティング・ジャーニー』神田 昌典 著

日経BP/日本経済新聞社出版部発行 2020年4月8日第1刷 P160


あなたが嫌がっている仕事が、社会を変える P160
 この仕組みを描いたのは、冒頭で紹介した高橋博志さんである。高橋さんは、青森県三沢市でリフォーム用木材の通信販売を手がける株式会社高橋の社長であり、青森県バイオマスエネルギー推進協議会の理事長でもある。
 立ち会がったのは、森林に対する危機感からだ。自身も祖父から森林を相続して、森を守る難しさを痛感していた。このままでは日本の豊かな森林が失われ、安価な輸入木材ばかりが流通することになりかねない。
 その打開策としていきついたのが、間伐材でペレットを作ることだ。これなら森林の荒廃を防ぎながらお金を稼げる。
 ただ、ネックは、間伐する人がいないことだ。プロのきこりに頼むと採算がとれない。
 行き詰った高橋さんは悩んだ末、突破口を見つけ出す。それが、「きこり」講座だ。木こり体験をリクリエーション化すれば、受講者は楽しめるし、こちらも安く間伐できると考えたのである。
 反響は高橋さんに予想以上。2013年に1回目の受講者を募ると、定員20名の枠になんと500人以上が応募してきた。
 その後も「木こり講座」は継続しており、東京や大阪、福岡等全国から人が集まっている。ここで得た技術を生かし、自分の地元の森林を整備する人も出てきている。

 この社会変革は、「時間に合わない」と思われていた低収入の、誰でもできる仕事を、学び化、遊び化したことから、すべてが始まった。
 同様の変革を起こすには、仕事にすると人が嫌がって担い手が集まらない作業をエンターテメント化、遊び化するという視点を持ってみよう。
 前項でも例に挙げたが、例えば介護はどうだろうか。心身共にタフさが必要とされる仕事であり、初心者では1日やり遂げるだけでもしんどいが、1日2時間程度手伝えるように切り分けることで、シニアになってから空いた時間で取り組める。「人に喜ばれる仕事」になる可能性がある。
 介護業務を始めるための入門講座や、自分自身が要介護にならないための健康講座などをセットすれば、事業所側もいくばくかのお金が入るようになるだろう。
 あなたが嫌がっている仕事は、新たな市場を創造するどころか、社会を変える最高の遊びになる可能性がある。

 この本は書店で買いました。著者の神田昌典(かんだまさのり)氏は、経営コンサルタント/作家として活動し、マーケティング界を引っ張る存在として知られています。この本の「おわりに」P218に「実は、この本は次世代を担う中学生、高校生に読んでもらうことを強く意識した、ということだ」と書いてありました。高橋氏の他に、世界で初めて無農薬・無堆肥のリンゴの栽培をした木村秋則氏も紹介されています。読みやすい本です。
 立ち読みして、P19に「ビジネスモデルを構築するまでの自分の成長プロセス」という図に惹かれて買いました。コロナ禍で思考が「壁」にぶつかっていたので、読んで、視点を変えるきっかけになりました。