ハーバードビジネスレビュー(2006年7月)
これまでバランス・スコアカードは、主に部門の業績改善に用いられてきたが、新たに「戦略テーマ」というツールを活用することで、全社的なシナジーを生み出し、企業価値を高める仕組みができあがる。
キャプラン教授が2005年12月に「戦略マップ」という本を書いた後の論文です。バランス・スコアカードは主に「部門の業績改善」として使われてきたのです。それにもかかわらず、私は最初から「戦略実行のツール」と考え学んできました。そこに認識のずれがあったのです。バランス・スコアカードに関する本に、「バランス・スコアカードは部分最適から全体最適を目指す」という表現が使われています。部分とは部門であり、全体とは全社を意味していたのです。
「戦略実行」は部門の業績改善が全社の業績改善にどのようにつながっているのかという検証に始まり、「戦略マップ」という言葉が生まれたのではないでしょうか。この論文に出てきた「戦略テーマ」は、部分最適と全体最適のつながりを表現するための言葉であり、経営計画をつくる段階では「方針」と考えます。私達は、全体最適を前提に経営計画を作成しますが、キャプラン教授は戦略実行の状況を検証し全体最適を考え、「戦略マップ」→「戦略テーマ」という表現を使っているのではないでしょうか。
アメリカでは、株主にたいして四半期ごとの業績をいかに示すことができるか、ということが大事であり、私達が目指しているように、中期の戦略を考え、それを単年度につなげて実行する流れを経営計画として策定する、という概念がないのではないか・・・という気がします。キャプランの本に、経営計画という言葉はでてきません。