ビジネス・ベストセラー出版株式会社発行 2019年12月20日第1販第1刷発行
(P51) 2)誰の満足度を上げることをめざすのか
前項から読み進めてくださっている方は、すでにある程度の創造がついているだろうと思います。誰の満足度を上げるのか。それは、自分の含めた全従業員です。ただ、組織のリーダーである皆さんは、いくらか自分の満足を後回しにして考えて行動していくことをオススメします。
経営者という仕事、とりわけ創業経営者の仕事は、自分の労働力やり方やリスクに対する報酬が最も割の合わないもの。そのように感じている読者諸氏もおおいのではないかと想像します。しかし、日々そういう意識の中にいると、つい、「私はこれだけ日々の努力をしているのだから、少しぐらい良い思いをさせてもらってもバチは当たらないだろうという」発想になってしまいがちです。
そこに大きな落とし穴があります。ご自身が、独立して経営者になる前のことを思い出してみてください。経営者として、「少しぐらいはいいだろう……」と思っていることであっても、従業員の立場では、「俺たちはこんなに我慢しているのに、社長だけいい思いをしているよなぁ。でも、そういうことを知るとやる気がなくなっちゃうよな」と思ってしまうものです。
人間は誰しも、自分がしていることは棚に上げて、他人が良い思いをしていることに対して不満を感じるようにできています。このことを強く意識しておきましょう。そうすれば、「なぜ、自分の満足を後回しに」するのかも、府に落ちるのではないかと思います。
自分のことを後回しにして、自分以外の全従業員の満足度を上げるということは、ここまで理解することができました。全従業員とひとくくりに言うことは簡単ですが、全従業員とは、一人ひとりの個人の集合体です。性格も違えば、働き方も違います。勤務時間や勤務日数も違うかもしれません。仕事の結果だけでなく、仕事に向かう意味や準備も、人によって違うはずです。いざ、従業員の満足度を上げることを考えたとき、具体的に、何に気を付けて何から着手すればいいのでしょうか。
従業員満足度を上げるための施策はさまざまありますが、それは全従業員に平等に行っていけば良いのでしょうか。
全従業員とは、自分も含めた全従業員ですが、もし自分のことを後回しにすることで、自分の満足度が下がってしまうようであれば、それは長期的に見てよいことではありません。ですので、自分自身の満足度が上がるようなマインドセットを形成する訓練を平行して行うことをオススメしています。
難しいことではありません。「他者の満足こそが自分の満足である」ということを、まず自分の理想に置き、その理想が現実だと強く念じ、その現実とマッチしないことがあれば気持ち悪いと感じ、その気持ちを解消するべく(現実を合わせていくために)努力していくこと。
誰の満足度を上げることを目指すのか、自分自身のマインドセットが確立されていれば、自分の満足度を上げることを目指しても、結果としてゴールは同じことになります。
前回と同じ本の1ページを書きました。ES(従業員満足)とCS(顧客満足)の関係をつなぐ業績評価指標(KPI)を考え、「サービスプロフィット・チェーンの仕組み」という図を見つけました。
・従業員満足度(EIS)と顧客満足度(CIS)をつなぐ鍵は「スキルの向上」「サービス力の強化」
・顧客満足度(CIS)と業績(Profit)をつなぐ鍵は「顧客のリピート」「競合優位性の確立
・業績(Profit)と従業員満足度(EIS)をつなぐ鍵は「福利厚生」「教育訓練」「給与/待遇」
「従業員満足度が高まれば、顧客満足度も高まり、企業としての利益も高まっていく」、結果に至るまでのプロセスはわかりますが、業績と従業員満足度をつなぐ「鍵」については腑に落ちません(汗、前回書いたときアドバイスをいただいたホスピタリティとコンタクトパーソネルをもっと学ぶとともに、経営者自身のマインドセットが大事と気づきました。