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「ドラッカー入門」上田 惇生 著

ダイヤモンド社発行 2010年4月1日第6刷発行

(P114)
バランスト・スコアカードのルーツ
 マネジメントの役割として、本業、人、社会的責任を言うだけでは、それこそ言うだけに終わり、成果をあげる経営とはならない。そこで必要となるのが、具体的目標である。
 ドラッカーは、7つの領域、あるいは8つの領域で目標を設定せよという。目標は複数である。複数だからバランスさせなければならない。企業活動に唯一絶対のものがあるとするから間違う。しかも、それが利益だとするから大きく間違う。これが、経営手法としてのバランスト・スコアカードのルーツとなったコンセプトである。
 目標を設定すべきは、第一にマーケティング、第二にイノベーション、第三に生産性。第四に人材、第五に物的資源、第六に資金、第七に社会的責任である。そして「条件」としての利益である。
 重要なことは、利益を条件として位置付けていることである。利益は目標ではない。条件である。明日さらによい事業を行うための条件である。したがって、マネジメントには7つの目標と1つの条件があるといったほうが適切である。
 これらの目標と条件をバランスさせて達成しなければならない。だから、バランスト・スコアカードと呼ぶ。何をバランスさせるかというと、財務、顧客、業務、イノベーション。すなわち、過去、外部、内部、将来である。
 それでは、それらのものを総称して何と呼ぶか。ドラッカーはこれを「富の創出能力」と名づける。企業の目標とすべきは、利益ではなくこの富の創出能力の最大化である。そして、その能力の十分な発揮である。
 企業の目標を富の創出能力の最大化とし、その内訳を複数の領域のそれぞれに複数の目標を設定させる等と言うことは、まさにモダンを内包するポストモダンの手法と言うべきである。もちろん、その大本の富の創出の増大とは、あくまでも世のため人のためのものである。

 ドラッカーの本との出会いは、2007年、研修で講師の宮本嘉興先生(公認会計士)から宿題としてだされた「抄訳マネジメント」(上田惇生訳 ダイヤモンド社発行1993年5月26日第37版)でした。この本の「おわりに」P189を読んで驚きました。上田惇生氏が経団連に就職し、翻訳チームに入ってドラッカーのマネジメントを翻訳した後、ドラッカーに直接交渉し「英語で薄くしたもの」が「抄訳マネジメント」と書いてありました。この本を読むと、ドラッカーの「世界」の背景が良くわかります。バランスト・スコアカードもドラッカーがルーツです。