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「居酒屋チェーン戦国時史」中村 芳平 著

イースト新書 2018年10月15日初版第1刷発行

(P26)
一軒の店からいかにしてチェーン化するか
 江戸時代までは、商家が店舗を増やすためには、養子、兄弟姉妹、親戚などの結束による家業としての支店経営をするのが基本であった。その次に、丁稚奉公制度を活用した「のれん分け」による支店経営が一般的となった。年少のうちから商家などに住み込み、下働きをして経営ノウハウを身に着けるのが丁稚奉公制度だ。これは丁稚から、手代、番頭と昇格し、五年、十年等決められた期限(年季)が明ければ、のれんを分けてもらい、独立できるというシステムだ。「のれん」とは、店の商号、格式技術、顧客、仕入先、事業ノウハウなど、有形無形の財産のことをいう。時代とともに、丁稚奉公の伝統は廃れたが、居酒屋業界には「社員独立制度」として、のれん分けの仕組みは今でも根強く残っている。
 一方の「FC」とは、チェーン・ストアが本部(フランチャイザー)となって加盟店(フランチャイジー)を募集し、店舗展開を行うことだ。国際チェーン・ストア協会の定義によれば、チェーン・ストアは、「単一資本で、11店舗以上の店舗を管理する小売業または飲食店の形態」のことをいう。
 具体的にはFCに加入した個人・法人が、FC本部から店舗の看板、商号、確率されたサービスなど、営業に必要な権利をすべて与えられるのに対して、加盟金、研修費など初期費用を支払うという契約を結ぶ。同時に売り上げに対してロイヤリティを支払ったり、広告負担金や店舗業務システム使用料などの継続費用を支払うという契約も結ぶ決まりだ。
 のれん分けとFCの違うところは、のれん分けが社員など社内の人間を対象にするのに対し、FCでは社外の人間、一般の人を対象にすることだ。もう一つ異なるのは、のれん分けは、五年、十年、二十年と長い時間がかかるのに対し、FCの場合はFC本部の研修を二~三週間受ければ、すぐにでもFCオーナーとして独立した店舗を持てることである。

 この本は、飲食業コンサル村岡さん(㈱レイ・コンサルティング)からフェイスブックで紹介いただきました。後書きP264に次のような記載がありました。「居酒屋業界でいま起こっていることは、「居酒屋チェーン業界の崩壊」ではなく、過去20年、30年続いてきた「陳腐化した居酒屋ブランド」と「新鮮で勢いのある居酒屋ブランド」との世代交代ではないかと思う」。まさに戦国史!飲食業のお客様が比較的多いので、大変参考になりました。「のれんわけ」「FC」そして第三の選択肢として「M&A」がありますが、その事例についても記載があります。おすすめの本です。