発行所ダイヤモンド社 2007年1月26日第1刷発行 2017年8月1日第14冊発行 P121
多様な関係者
非営利組織といえども、成果をあげるにはプランが必要である。プランはミッションからスタートしなければいかなる成果もあげられない。ミッションが、あげるべき成果を想定する。
したがって、非営利組織は、顧客は誰かを考え、そのそれぞれにとって成果はなんであるかを考えなければならない。
非営利組織と企業との最大の違いは、非営利組織には多様な関係者がいるところにある。かつて、企業には関係者は1種類、顧客しかいなかった。当時は、従業員、コミュニティ、環境、株主さえ制約要件にすぎなかった。これが大きく変わったことが、今日のアメリカの経営者が世も末と思うようになった一因である。
ところが、非営利組織にとって関係者はもともとたくさんいる。そのいずれもが拒否権を持っている。学校の校長は、教師、教育委員会、納税者、そして高校の場合には生徒まで満足させなければならない。これら五種類の顧客がみな、学校を違う角度から見ている。彼らのいずれもが、学校にとって欠くことのできない存在である。それぞれがそれぞれの目的をもっている。校長としては、クビにされたり、ストライキされたり、座り込まれたりすることのないよう、彼らのすべてを満足させなければならない。
1960年頃まで、地域の病院は基本的に医師のために経営されていた。医師が最上位の関係者だった。医師が「入院させなさい」といえば逆らう者はいなかった。いまでは事態は変わった。医療費を負担する雇用主が、医療的にも経済的にも満足させられるべき関係者として登場した。病院の収入の五分の二が老人医療費となったために、連邦政府が病院の利害関係者として登場した。会員制健康保険組合まで利害関係者になった。病院の職員も発言権を増大させた。より多くを要求するようになったというよりも、彼らの多くが専門性を高めたためだった。
最近協会の多くが信者を増やし、活動を活発化させているのは、青少年、新婚、成人のそれぞれのマーケットが別のニーズを持っていることを認識し、その認識を活動に反映させるようになったからである。
それらの境界は、信者のグループごとに目標を設定し、それぞれに担当者を配置している。
上記について『実践するドラッカー利益とは何か』(上田惇生監修P94)では下記のように解説しています。
多くの組織は、ミッションを持っています。それは企業理念や経営理念などとして表現されています。また、経営計画をはじめとした各種プランも多くの場合持っています。しかし、売上や利益とは別に「成果」を定義している企業は億ありません。ドラッカー教授が「成果が主役である」としたにもかかわらずです。
経営計画を立案してもいわゆる“絵に描いた餅”となってしまうのは、成果を定義していない点に多くの一端があると考えられます。あるいは、成果の形を利益のみで定義しているケースが多いからではないでしょうか。
(中略)
ミッションと計画を結ぶ重要な役割を果たす「成果」を明確にすることが、ミッションという良き意図を計画として具体化し、実行たらしめる唯一の方法です。マネジメントの主役たる「成果」に対する組織全体の意識を高めて、結果を手にしましょう。
そもそもミッションには「使命」や「役割」。「任務」などの意味があり、ビジネスシーンにおいては、「会社が成し遂げたい目標」や「会社が果たすべき使命」。「社会における存在意義」のことを指します。という説明がほとんどです。
会社が誰に対して果たす使命なのでしょうか?知的資産経営で、「企業が持続的な利益を続けていくためには、その企業の取組みを顧客、取引先、従業員、金融機関、株主などのステークホルダーに有益な情報を開示する必要がある」と述べているのを思いだしました。2冊の本を読み、ミッションとは「会社がステークホルダーに対して果たすべき役割」と理解しました。その「成果」が利益につながらなければ企業は持続的な発展を続けることができない、それがミッションからスタートするという意味ではないでしょうか。