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『トヨタの会議は30分』 山本 太平 著

富慶太郎発行 発行所株式会社すばる舎 20212年4月14日第1刷発行 2021年7月26日刷発行 P100

「口2耳8の割合で話す」
黙らず、かつ話過ぎず
 みなさんは「口2耳8」と聞いて何のことだと想像しますか?
 例これは会議などでのコミニュケーションスタンスを示した言葉です。
 現在のトヨタでもこれを実践しているかどうかはわかりませんが、私が在籍していた頃のある役員がこの言葉を好きだったらしく、たびたび「口2耳8」に関するメッセージが社内で回覧されていました。
 誰が言いだしたのかは知りませんが、いま思うとなんともトヨタらしい言葉だったなと感じます。

 例打ち合わせや会議での発言がゼロでは、その会議におけるアウトプットはゼロです。何も発言していないわけですから、例えるなら「口ゼロ」です。
 トヨタ在籍時には、そんなふうに会議で何も発言しなかったりすると「空気さん」と揶揄されることもしばしばありました。
 例一方で会議の場で「口8」、つまり自分がしゃべってばかりでは、今度は対話が一方的になってしまいます。特に関係者が一堂に会するような会議では、ほかの参加者の貴重な意見や情報を共有してもらえなくなってしまうでしょう。

 そのようなことにならないよう、自分の意見はしっかり表明して必ず議論に参加しつつ、相手の意見を聞きだしたり確認したりすること。
 こうした二つのバランスを、口=自分が話すこと2割、耳=相手の話を聞くこと8割という形で示したのが「口2耳8」という言葉の意味です。会議などではこの割合でコミュニケーションしなさいよ、ということですね。

 人間ひとりの脳内にインプットされている情報量はたかが知れています。多くの参加者が自発的に情報やアイデアを提供しあうことで、自分だけでは思いもつかなかったアイデアや結論を得られることがあります。
 「口2耳8」という言葉には、そうしたメリットを享受するために他者には常に経緯を示し、その意見を慶長したうえで自分の意思も明確に伝えるべし、というメッセージが込められていたのだろうと私は解釈しています。

 筆者は、新卒でトヨタ入社後退職しTBSに入社、その後アクセンチュアでコンサルタントの経験を積み、現在経営コンサルタント、事業プロデューサーとして活躍しています。会議等でのコミュニケーションスタンス「口2耳8」、意識しているのですがなかなか実行できません。「はじめに」の部分に「根回しや段取りの力はもはや誰にも求められていない」と書いてありました。先週紹介した「KPI大全」にもあったのですが、経営理念やビジョンの共有が前提になければ「口8耳2」になってしまう傾向が強いのではないでしょうか。

『KPI大全 重要経営指標100の読み方&使い方』著者グロービス 執筆者 嶋田 毅 発行者 駒橋憲一

発行所東洋経済新聞社 2020年9月10日発行 P30

「KPI経営の課題」
➃KPI至上主義に陥らない
 KPIを用いた経営は効果的ですが、KPIが過度に編重されるようになるのも問題です。例えば企業において最上の行動指針になるのは経営理念ですが、通常そこには数字が入らないことが多いでしょう。ビジョンや戦略には数字が入ることも多いですが、その場合も「○○業界ではナンバーワン」といった表現になることが多いものです。つまり、KPIは目的となるケースがゼロではないものの、やはり手段としての意味合いが大きいのです。
 何事にも言えることですが、手段の目的化や、手段が目的を振り回すことはあまり好ましいことではありません。例えば、新聞社が、社会目的を忘れて部数のみにこだわって大衆に迎合しすぎた紙面を作ったり、内容をおろそかにしてはやはり大問題です(その他にも営業面での「押し紙」の問題なども長く指摘されています)。テレビの民放も、視聴率は確かに大事なKPIですが、それに振り回されすぎると、人々の支持を失ってしまいます。より。身近な例でも、減量をしすぎて健康を損ねるようでは本末転倒です。常に、何のためにKPIを想定してマネジメントを行っているかという原点に立ち返ることが必要です。

 数字と言うものは、往々にして一人歩きしたり、金科玉条のように最終目的化することが少なくありません。みなにとってわかりやすいものであるがゆえに、あるいは他社と比較して優越感や劣等感を抱きやすいのです。そうした数字の持つマイナスの紅葉も踏まえたうえで、KPIというものと付き合っていくことが必要です。

 KPIを用いたマネジメントには限界があるという理解も必要です。例えば、確かに特定のKPIに評価報酬を紐づければ、人々をそのKPI達成に向けて動機付けることは可能です。しかし、それだけに頼った経営は非常にもろいものです。

 動機づけは確かに評価を活用して行うこともできますが、やはり本人の内発的動機が必要です。そうしたことを忘れて数字だけで人を動かそうとすると、非常にぎすぎすした組織になってしまうのです。また、戦術したように、評価に結び付く特定のKPIを高めるために、本来の企業の目標にそぐわないような行動をちってしまう可能性もあるのです。

 KPIは切れる刀だからこそ取扱いには注意が必要だ、ということは強く認識しておくべきでしょう。

 本のP30に、KPIを用いた経営は「適切に行えば」非常に効果的なのですが、時にはかえって費用対効果を損ねたり、意図せぬ結果を招くこともあります。ここでいくつかの運用上のポイントをご紹介しましょう。と説明があり、➀KPIのバランスをとる、➁KPIを適度にブレークダウンする、➂KPIは正確さと鮮度にこだわる、➃KPI至上主義に陥らないという区分で書いてあります。
 経営理念は最上の行動指針、KPIはそれを達成するための手段としての意味合いが大きいという「大切なこと」に気づき、➃を紹介しました。


i不都合な状況になるように仕向ける、計略におとしいれる、といった意味の表現。