今日の1ページ

『断絶の時代』 著者 P.F.ドラッカー 訳者 上田 惇生

ダイヤモンド社発行 2007年7月12日 第1刷発行 2019年1月24日第5刷発行 P214

(成果が主人公)
 今日の組織は、集中することによってのみ成果を上げうる。組織とそのマネジメントの力の基盤となりうるものは一つしかない。成果である。成果をあげることが、組織にとって唯一の存在理由である。組織が権限を持ち権力を振るうことを許される理由である。このことは、組織それぞれが自らの目的が何であるかを知らなければならないことを意味する。
 われわれは、組織それぞれの能力を測定し、あるいは少なくとも評価することができなければならない。また、組織が自らの役割に集中すべきことを要求しなければならない。これらを超えるものはすべて越権である。
 多元社会iの組織にとっては、それぞれの目的に集中することが正統性の鍵となる。それぞれの組織にとって、何が自らの目的であるかについては、いろいろな考えがありうるし、あって当然である。しかもそれは、状況、ニーズ、価値観、技術の変化によって変わっていく。同じ国の別の大学、同じ産業の別の企業、同じ医療にかかわる別の病院など、同じ世界に属していても、組織が違えば別のものであっても不思議はない。
 しかし、いずれの組織も自らの目的を規定するほど強くなる。自らの成果を評価する尺度と測定の方法を具体化できるほどより大きな成果をあげる。自らの力の基盤を成果による正統性に絞るほど正当な存在となる。こうして、「彼らの実りによって彼らを知る」ことが、これからの多元社会の基本原理になる。

 上記について先週紹介した『実践するドラッカー利益とは何か』P92では下記のように解説しています。

 利益なくして組織の存在はありえません。利益の源泉は顧客です。したがって、顧客の存在なくして組織の存在はありえません。「事業の目的は顧客の創造である」とドラッカー教授が述べた理由でもあります。

 中小企業庁の事業で、早期経営改善計画策定支援事業(通称:ポストコロナ持続的発展計画事業)がスタートしています。認定経営革新等支援機関として、計画の作成を支援する機会が増えてきました。計画は黒字化のストーリーをつくることから始めましょう。


i 多元社会とはつまり、企業だけでなく、政府機関、労働組合、学校、病院など様々な組織が一つの社会に含まれていることを意味します。これは企業の中でも同じことが言えます。企業の中にはさまざまな部署が存在しています。営業部門だけでなく、経理部、総務部、システム開発部などなど。現代は多元社会です。だから、企業全体、社会全体について知る必要があるのです。
参照 https://note.com/parikan/n/n85deecbf944c

『実践するドラッカー 利益とはなにか』上田 惇生 監修 佐藤 等 編集

発行ダイヤモンド社 2013年3月27日第1刷発行 P89

われわれにとっての成果はなにか
 組織の成果は、一人ひとりの人間の生活、人生、環境、健康、期待、能力の変化という組織の外の世界に表れる。組織がミッションを実現するには、あげるべき成果を明らかにして資源を集中しなければならない
『経営者に贈る5つの質問』……P55
P92 成果は組織とマネジメントの基盤である
 組織とそのマネジメントの力の基盤となりうるものは一つしかない。成果である。成果を上げることが、組織にとって唯一の存在理由である。(中略)このことは、組織それぞれが自らの目的が何であり、成果が何であるかを知らなければならないことを意味する。
『断絶の時代』……P214
P94 成果の定義① ミッションからスタートする
 ミッションからスタートしなければいかなる成果もあげられない。ミッションがあげるべき成果を想定する。
『非営利組織の経営』……P121
P96 成果の定義② 三つの領域で定義する
 あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取組み、人材の育成である。これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬ。
『経営者の条件』……P81
P98 成果の定義③ 効率より成果が先である
 最高の事業であっても効率が悪ければ潰れる。しかし間違った事業であっては、いかに効率が良くとも生き残ることはできない。馬車用の鞭(むち)のメーカーであったのでは、効率のいかんにかかわらず存続はできない。成果のあがる事業であることが繁栄の前提である。効率はその後の条件である。効率とは仕事の仕方であり、成果とは仕事の適切さである。
『マネジメント(上)』……P52

 私の趣味の一つは映画を見ること、気に入った映画は何度も見ます(笑)。ネットフリックス、「もう一度みる」を時々利用します。繰り返してみることで気づかなかったことを発見できます。
 書きたかったのは映画の話ではなく、ドラッカーの本です。以前も書きましたが私は上田惇生氏iの著書を主に読んでいます。繰り返し読むことで理解度が深まります。今、取り組んでいる事はこの本から始めました。PDCAというサイクルを唯一の経営プロセスと考えることは危険です。常にミッションを確認し、必要とあればミッションを見直し、新たな基礎をえて計画を立てていかなければなりません(P246)。もう一度原点に返って復習します。


i1938年11月9日―2019年1月10日は日本の経営学者。モノづくり大学名誉教授、立命館大学客員教授、ドラッカー学会代表。Wikipedia参照

『仕事はカネじゃない!』ケビン&ジャッキー・フライバーグ 著 小幡 輝夫 訳

日経BP社発行 2004年4月26日 第1刷発行 P124

経営戦略を共有する
 経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない。経営者であれば重大な問題に直面したとき、自信をもって対処することを問われる。そんな場合、経営者の立場を自覚する者は常識を働かせて判断を下す。もちろん全社員が経営戦略を熟知していれば、適切な判断を下しやすくなるだろう。経営戦略を従業員に知らせるのは、まさに適切な判断を下してもらうためなのだ。それを確実にする一つの方法として、何か問題に直面したとき、どういう選択肢を選ぶか質問してみるとよい。会社に独自性を持たせるには何をすべきか、考えてもらうのもいいだろう。当然のことだが選択肢を選ぶ場合、会社の目標や現状、存在意義について理解していれば、適切な判断を下しやすくなる。
 サウスウエスト航空は、この問題についてよい見本を提供してくれる。従業員が指定席を設けるよう提案したときコリーン・パレットは、それは会社の基本戦略に沿ったものかと聞き返した。指定席を設けるのは簡単だが、そうした場合、待機時間が長くなり、定時発着の実績に支障をきたさないだろうか。さらに運賃も10ドルから15ドル値上げすることになり、顧客にとっても望ましくないはずだ。ガッツのあるコリーン・パレットは、会社員に自社の経営戦略を再確認させるチャンスを逃がさなかった。彼女はこの問題について従業員と率直に話し合いサウスウエスト航空の経営戦略を説いたのである。経営者の立場で行動するには、経営戦略を熟知していなければならないからだ。
 パレットは従業員の自主性を奨励すると同時に、従業員が適切な判断をしているかどうか点検する必要があることも心得ている。経営戦略に基づく従業員の自主判断の範囲を想定しているの、サウスウエスト航空の目標やビジョン、価値観なのである。自主判断の範囲が規定されているといっても、それは創造性の制限や無秩序とは全く関係ない。サウスウエスト航空の目標は確かに、ウォルマートと違っている。そして、その違いが重要であることをサウスウエスト航空は自覚いているのだ。 i経営者の立場を自覚する従業員は、次のような質問に答えることができる。わが社はどんな事業に取組んでいるか。我が社は何のために存在いているのか。我が社は他社どう違っているのか。経営戦略を示すことは、従業員の活力抑制はつながらない。それによって、従業員は自主的に行動できるようになるのだ。

 この本は、書棚から探しました。「経営者としての自覚を育てるには、経営者と従業員の間に誠意がなければならない」…奥の深い言葉です。後継者に人事と組織を渡した私にできることはOJT。「お客様の期待に応える取組み」後方支援に徹し、従業員に「仕事を通じて自主的になってもらうこと」に徹します。


iサウスウエスト航空の創業者ハーブ・ケレハーの法律事務所で役員秘書を勤め、社長兼CEOになった人。

『経営理念の教科書』新 將命 著

㈱日本実業出版社発行 2020年11月1日 P199 第6章 生きた経営理念の使い方


創った理念は使ってこそ
 理解度とは行動の質と量に表れるものだ
 経営理念の理解度とは全社員の行動に表れる。行動に表れるとは、理念を道具として日常業務に使っているということだ。いささか口が酸っぱくなる気がするが、経営理念は使ってナンボである。
 とはいえ改めて経営理念をつくるとなると、それはそれで大変な知力、体力を必要とする。その結晶である経営理念を眺めていると、そこには努力と苦労のにおいがする。
 額縁に入って、社長室の壁の高いところに掲げられた経営理念をみると、社長の気持ちは変わってくる。
 しかし、壁に掲げただけでは何の役にも立たない、単なる掛け声である。
 一つの理念を創り上げるのは、確かに大きな作業だ。だが、創ることそれ自体はプロセスであり、手段にすぎない。
 たとえば、一つの製品を仕上げるには、必ずそれ相応の苦労がある、時間もかかる。
 開発から完成まで一気呵成に一直線という製品はあり得ない。途中に山もあり、谷もある。試行錯誤を繰り返しながら、ときには数多くの挫折も味わい、完成までこぎつけるものだ。だからこそ、完成したときの喜びがひとしおなのである。

●使われない製品は存在しないのと同じ
 しかし、製品はつくって終わりではない。使ってもらわないことには開発した意味がない。
 ソニーが創業から間もない頃に、日本で初めてのテープレコーダーをつくった。まだ社名を東京通信工業としていた時代である。
 日本のオープンリール型のテープレコーダーは、創業者、井深大氏の悲願だった。それまでトースターや電気釜をつくっていた東通工(東京通信工業)がはじめてつくった音響製品である。
 日本初のテープレコーダーは、日本の産業史の中でも画期的な製品だ。
 だが、井深大氏は、テープレコーダーの完成だけでは喜ばなかった。製品は使われなければ意味がない。
 販路を徹底的に追求した。当時の放送局はまだ数が少ない。一般に売るには価格が高い。そこで井深氏は学校に販路を求めた。
 学校なら視聴覚教育用にテープレコーダーを使う。そして学校の数は放送局よりも圧倒的に多い。

●技術も理念も使われるためにある
 かつて、ソニーの役員を務める人から、「ソニーは技術の会社と言われているが実はマーケティングがソニーの強みだったのです」と聞いたことがある。
 その役員は、井深氏のつくった日本で最初のテープレコーダーに感銘を受け、まだ中小企業だった東通工に入社した人だ。
 ソニーはその後も独自の製品を開発し続けてきたが、次第に技術のみ社内での価値が偏り始めたように見える。
 製品も技術も使われてナンボ、つくっただけでは記録に残るだけで記憶には残らない。70数年を経て井深氏のDNAは薄らいだのだろうか。
 技術には二つある。使われる技術と使われない技術だ。
 使われない技術にも優れたものは多い。現在、航空機の材料にも使われる炭素繊維は、源流を辿るとエジソンの発明した電燈に行き着く。
 炭素繊維は、今日でこそ脚光を浴びているが、20年ほど前には釣り竿、ゴルフクラブにしか使われていなかった。
 技術には用途開発が必要なのである。技術がどんなに優れていても、実際に使われなければ冬眠状態が続いてしまう。
 一方、経営理念も同じことで使われるために創られる。
 有言実行(Say if and live it)がなければ、宝の持ち腐れに等しい。
 本来、使うために創られた経営理念が、できたとたんに「記念品」と化しては、何のために創ったのかわからない。「仏作って魂入れず」である。
 カネや時間や技術と同じことで、経営理念もまた使ってこそはじめて本当の意味をもつのだ。

 著者は、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどエクセレントカンパニー6社の社長として活躍、現在コンサルタントをしています。「経営理念を実践する」大事なことですが、なかなかできていません。経営理念を実践するための行動基準をつくり、朝礼で斉唱していますがわが社は「実践できている」と言えるか疑問でした。昨年、幹部合宿で経営理念に基づく基本方針(商品、お客様、社員、会社、地域社会)を話し合いました。そして決まった今年の方針は「お客様の期待に応え、お客様と共に成長しょう!」です。経営理念を実践するための「わが社ならではのやり方」考えませんか。