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「ザ・ビジョン」ケン・ブラチャード&ジェシー・ストナー 著

ダイヤモンド社2004年1月8日発行

(P29)「ビジョン」とは何か
 木曜日の朝も、ジムと私は「二人の専用テーブル」でコーヒーを飲んでいた。「私のメッセージに対するきみの質問に考えていたんだが、確かに、メールメッセージには、ある意味のインパクトがあった。でも昨日も言ったように、私が望むような、もっと大きな変化は起きていない気がする。
父の時代は、会社全体が「全速前進!」だった。全員が、何を、何のためにやっているのか、きちんと意識していた。何があろうと、決してひるまなかった。自分たちは、社会に貢献する企業を動かしているのだと信じていた。まるで家族のように喜びを分かち合い、助け合っていた。父の影響力は大変なものだった。父のそばにいると、自分は誰かの役に立っていると確信できた。あのころは、会社全体に喜びがあふれていた。私はそれを再現しようとしたが、同じようにできなかった。時代が違うし、父の時代にうまくいった方法が、必ずしも今うまくいくわけじゃないんだ」
当時は全てが「全速前進!」だったというジムの言葉が妙に気になった。『全速前進!』ってどういう意味」と私は尋ねた。
「これはな、蒸気船が走っていた時代の言葉なんだ。エンジンを全開にして、全速力で進んでいるということさ」
「確かに戦争でも使われる言葉じゃなかったかしら?「機雷なんかくそくらえ、全速前進」っていうふうに」
ジムはにっこり笑った。「そこまで言われたら、だまっているわけにはいかないね。こう見えても歴史マニアなんだ。この言葉は、南北戦争の時に海軍のファラガット将軍が言った言葉だ。君の言うとおり、たとえ機雷がしかけてあろうが「機雷なんてくそくらえ」と言って対局を拒んだのがさ、それにしてもどうしてそんなことを思い出したの?」
「『全速前進!』という言葉に、向う見ずに危険に飛び込んでいくというニュアンスがあるのじゃないかと思って」
「いや、その反対だ、むしろはっきりした目的を持ち、その実現に一生懸命取組、きっと実現できると信じる……つまり「ビジョン」を持つことによってどんな障害があろうと断固として前進していくという意味だよ」
ジムは一瞬間をおいてから言った。「それこそまさに、父のやっていたことだ」

 先日、ある会社の経営計画をみせていただいたら、ビジョンに「一人で100歩より100人の1歩の会社になる」という言葉がありました。ビジョン実現のため、環境変化に対応し新たな取組をするにあたり、先行して仕組みをつくり、「この方法で大丈夫、一緒にやろう!」とトライしてきたのですが、順番が間違っていたことに気づきました。久々にこの本を再読、「前進」の仕方について考えました。