日経BPコンサルティング発行 2014年1月13日初版第1刷発行
(P24)
「実行して失敗したのか、実行しなかったのか、やり方が悪かったのか」
誰しも失敗は避けたいものですが、失敗をなくすことはできません。加えて、他社に先駆けて打ち出す創造的な戦略であればあるほど、失敗のリスクが高まるのも当然のことです。ですからここで注目したいのは、失敗の原因です。
戦略がまずかったのであれば、戦略そのものの軌道修正を図る必要があります。また、やり方がまずかったとなれば、どうまずかったのかを分析しなければなりません。しかし多くの場合、「どうまずかったのか」を分析できるほど具体的な「やり方」が明確になっているわけではありません。あるいは、それを現場に考えさせるためには、戦略を意図的に理解させ、「どうやるつもりか」を事前に明確にしておく必要がありますが、そこまでの取組がなされていることもありません。これでは戦略が悪かったのかどうかもわからないということになります。
そして最悪なのは、実行したのかどうかすら、わからないことです。これでは手の打ちようがなく、「失敗した」という悪いイメージだけが残ってしまいます。
このような事態を避けるためにも、戦略を推進する側は営業現場での戦略実行の模様を注意深くウォッチする必要があります。というのは、指示通りのことを実行していなくても、それを正直に報告する担当者はほとんどいないからです。たいていの場合、何もしていないにもかかわらず「やったけど反応がなかった」と、事実が歪曲されて報告されます。
それを真に受けて戦略を修正すると、どうなるのでしょうか。本来は不要な手直しが重ねられ、いずれは戦略そのものが迷走し始めます。(以下略)
著者の河村亨氏、株式会社富士ゼロックス総合教育研究所のシニアコンサルタントです。第3章の戦略実行における「フレームワーク」活用という項では、BSC活用による戦略の可視化と論理の担保について言及しています。自ら考え戦略的に動く営業集団をつくることを目的に書かれた本です。戦略目標実行のためKPIを設定し、そのKPIをアクションプランと紐づけ、定期的な会議で振り返りを実行し続けていれば、手の打ちようがなく「失敗した」ということはありません。著者は、現場で「実際に確認していない“きれいごと”は、まずとことんうたがえ」という信条でコンサルティングを実践していると、後書きにありました。