ダイヤモンド社刊 2003年11月 第1刷発行
(P.6 これが戦略的思考だ)
では、「それなり」経営を脱し、「ならでは」経営に転換するとは、どのようなことになるだろうか。一言でいえば、差別化を追求した方向性を出すことである。具体的に言うと、何かに特化することや、従来のやり方や同業他社のやり方とは一変した、新たなやり方を始めることである。同じような競争力があった企業が、1つの現象に対する見方の違いによって、その後のパフォーマンスに大きな差がでた例は実に多い。
富士写真フィルム(以下、富士フィルム)とコダックは、世界のフィルムビジネスを2分する両雄だったが、デジタルカメラという新しい技術に対する戦略的な取組みが、その後の両社のパフォーマンスを決定づけてしまった。コダックは、デジタルカメラ技術を敵とみなし、一切これとは一線を隔して、どちらかといえば戦う戦略に出た。一方富士フィルムは、これは新しい技術の流れであると判断し、いち早く新技術をリードしていく戦略に出た。両社は、正反対の戦略的判断を下し、全く違うことを行った。結果、富士フィルムはコダックに圧勝することとなる。世界の市場を2分する両雄がいまや株価も大きく差が開いている。富士フィルムの勝利は、戦略とはかように重要なものであり、勝者も戦略を誤ると、一瞬にして崩れてしまうことを物語っている。カメラ業界においては、コダックに限らず、デジタルカメラに乗り遅れて後退した企業は多い。
「戦略参謀」開発の始まりはこの本からでした。多分、15年くらい前のことです。岩手県の盛岡市に「ジュンク堂」があると聞いてドライブし、この本をみつけました。それから、経営戦略を追及する旅が始まり、ITC、バランス・スコアカード、ドラッカーと進み「戦略参謀」のベースになったソフトを購入し、腑に落ちる仕組みにする取組をして、「戦略参謀」が生まれました。そのソフトは今、戦略ナビ(戦略参謀&web軍師)になっています。
最近、これからの人生の区切りになる出来事があり、本の整理をしました。事業構造(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント—PPM)もこの本で初めて知りました。著者の水越豊氏は、ボストンコンサルティンググループヴァイスプレジデント、名古屋事務所代表、東京大学経済学部卒と紹介されています。原点に返って読み直すことにしました。