発行所東洋経済新聞社 2020年9月10日発行 P30
「KPI経営の課題」
➃KPI至上主義に陥らない
KPIを用いた経営は効果的ですが、KPIが過度に編重されるようになるのも問題です。例えば企業において最上の行動指針になるのは経営理念ですが、通常そこには数字が入らないことが多いでしょう。ビジョンや戦略には数字が入ることも多いですが、その場合も「○○業界ではナンバーワン」といった表現になることが多いものです。つまり、KPIは目的となるケースがゼロではないものの、やはり手段としての意味合いが大きいのです。
何事にも言えることですが、手段の目的化や、手段が目的を振り回すことはあまり好ましいことではありません。例えば、新聞社が、社会目的を忘れて部数のみにこだわって大衆に迎合しすぎた紙面を作ったり、内容をおろそかにしてはやはり大問題です(その他にも営業面での「押し紙」の問題なども長く指摘されています)。テレビの民放も、視聴率は確かに大事なKPIですが、それに振り回されすぎると、人々の支持を失ってしまいます。より。身近な例でも、減量をしすぎて健康を損ねるようでは本末転倒です。常に、何のためにKPIを想定してマネジメントを行っているかという原点に立ち返ることが必要です。
数字と言うものは、往々にして一人歩きしたり、金科玉条のように最終目的化することが少なくありません。みなにとってわかりやすいものであるがゆえに、あるいは他社と比較して優越感や劣等感を抱きやすいのです。そうした数字の持つマイナスの紅葉も踏まえたうえで、KPIというものと付き合っていくことが必要です。
KPIを用いたマネジメントには限界があるという理解も必要です。例えば、確かに特定のKPIに評価報酬を紐づければ、人々をそのKPI達成に向けて動機付けることは可能です。しかし、それだけに頼った経営は非常にもろいものです。
動機づけは確かに評価を活用して行うこともできますが、やはり本人の内発的動機が必要です。そうしたことを忘れて数字だけで人を動かそうとすると、非常にぎすぎすした組織になってしまうのです。また、戦術したように、評価に結び付く特定のKPIを高めるために、本来の企業の目標にそぐわないような行動をちってしまう可能性もあるのです。
KPIは切れる刀だからこそ取扱いには注意が必要だ、ということは強く認識しておくべきでしょう。
本のP30に、KPIを用いた経営は「適切に行えば」非常に効果的なのですが、時にはかえって費用対効果を損ねたり、意図せぬ結果を招くこともあります。ここでいくつかの運用上のポイントをご紹介しましょう。と説明があり、➀KPIのバランスをとる、➁KPIを適度にブレークダウンする、➂KPIは正確さと鮮度にこだわる、➃KPI至上主義に陥らないという区分で書いてあります。
経営理念は最上の行動指針、KPIはそれを達成するための手段としての意味合いが大きいという「大切なこと」に気づき、➃を紹介しました。
i不都合な状況になるように仕向ける、計略におとしいれる、といった意味の表現。